個人投資家の間で、お金の預け先に対する意識がガラリと変わり始めています。私たちが将来に向けて資産を作るための代表的な金融商品である投資信託において、大きな地殻変動が起きました。日経平均株価や米国のS&P500といった代表的な経済指標の値動きと連動する「パッシブ投信」の純資産残高が、2019年に初めて全体の過半数を占めたのです。この動きは、日本のマネー層がいかに無駄なコストを削り、手堅い運用を重視しているかを如実に物語っているでしょう。
SNS上でもこのニュースは大きなトレンドとなっており、「ついにインデックス投資が主役に躍り出た」「手数料が高い商品にお金を払う時代は終わった」といった歓喜の声が溢れています。これまで一般的だった、ファンドマネージャーと呼ばれる運用のプロが独自に銘柄を選別して市場平均以上の高い利益を狙う「アクティブ投信」を、ついに逆転した形です。投資初心者からベテランまで、多くの人々がこの歴史的な転換点を好意的に受け止めており、市場の熱気は高まるばかりと言えます。
コストパフォーマンスの高さが投資家を魅了する秘密
これほどまでにパッシブ投信が支持を集める最大の理由は、圧倒的な「信託報酬」の安さにあります。信託報酬とは、投資信託を管理・運用してもらうために投資家が支払い続ける手数料のことです。パッシブ投信は機械的に指標と同じ銘柄を買い合わせる仕組みであるため、人の手がかからない分だけコストが格安に抑えられます。実際のデータを見ると、アクティブ投信の信託報酬が平均で年1.36%であるのに対し、パッシブ投信は年0.71%と約半分にとどまっているのです。
さらに最近では、年0.1%前後という驚異的な超低コスト商品も続々と登場しており、長期保有を前提とする投資家にとっては見逃せない魅力となっています。この手数料の差は、10年や20年といった長いスパンで運用を続けた場合、最終的な利益の額に数万から数十万円もの大きな違いを生むでしょう。私は、投資において確実にコントロールできる唯一の要素が「コスト」である以上、この低コスト志向は極めて賢明で合理的な選択であると考えます。
老後2000万円問題が火をつけた長期安定運用のブーム
この劇的な変化を加速させた引き金が、2019年に世間を騒がせた「老後2000万円問題」です。公的年金だけでは老後の資金が不足するという報告書をきっかけに、これまで投資に馴染みのなかった現役世代や若者たちが一斉に資産形成へ動き出しました。こうした投資の裾野の広がりが、長期でじっくりと安定した収益を狙えるパッシブ投信への強力な追い風となっています。コツコツと毎月積み立てるスタイルの投資が、一時のブームではなく確固たる文化として定着しつつあるのでしょう。
三菱アセット・ブレインズの調査によると、2019年12月末時点でのパッシブ投信の純資産総額は50兆500億円に達し、前年末比で29%も急増しました。これに対してアクティブ投信は43兆9500億円と、わずか6%の増加にとどまっています。これまで市場を牽引してきたアクティブ型ですが、かつて大人気だった「毎月分配型」が超低金利の煽りを受けて分配金を減額し、解約が相次いだことも明暗を分ける要因となりました。
グローバルな潮流に乗って未来の資産を育てる
日本国内のパッシブ投信の勢いは、過去5年間で3倍以上という猛烈なスピードで拡大しています。この数字には日銀による大量の上場投資信託(ETF)購入の影響も含まれますが、それを差し引いても一般投資家による購入だけで7割増を記録しました。こうしたパッシブ優位のトレンドは日本固有のものではなく、世界的な潮流です。例えば投資大国である米国では、米国株を対象とする投資信託において、2019年8月にパッシブ型のシェアが初めて過半数を突破して話題を呼びました。
単に「プロに任せれば安心」という盲信から脱却し、コストを厳しく見極めて自ら未来の資産を守る時代が到来しています。アクティブ投信が必ずしも悪いわけではありませんが、市場平均に勝ち続けるファンドを選ぶのは至難の業です。まずは手堅く経済の成長に乗ることができるパッシブ投信を資産形成の軸に据えることが、これからの令和時代を生き抜く個人のマネー戦略において、最も確実で王道なステップになるでしょう。
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