日本の個人投資家にとって、2019年12月04日は歴史的な「手数料革命」の記念日として記憶されることでしょう。SBI証券や楽天証券といった業界の巨頭たちが、ついに投資信託の販売手数料を完全無料化すると発表しました。これで主要ネット証券5社が足並みを揃えることとなり、誰もがコストを気にせず資産運用を始められる「ゼロ時代」が幕を開けたのです。
SBI証券は2019年12月16日から、取り扱う約2700本もの投資信託すべての手数料を撤廃します。さらに驚くべきことに、ETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の信用取引、さらには夜間の私設取引システム(PTS)の手数料まで無料化の対象に含まれています。これは、同社が掲げる「ネオ証券化」構想の大きな一歩と言えるでしょう。
SNS上ではこのニュースに対し、「いよいよ手数料を払うのが過去の話になるのか」「小口投資家には神対応すぎる」といった歓喜の声が溢れています。これまで、どんなに少額でも取引のたびに引かれていたコストが消滅するという事実は、これから投資を始める若年層にとって、心理的なハードルを劇的に下げるポジティブなインパクトを与えています。
ここで「信用取引」という言葉を整理しておきましょう。これは、現金や株式を担保として証券会社に預け、その数倍の資金を借りて取引を行う仕組みです。リスクも伴いますが、少ない資金で大きな利益を狙えるのが特徴です。また「PTS」とは、取引所を通さず夜間などに売買できるシステムを指し、仕事終わりの会社員には欠かせないツールとなっています。
収益モデルの激変と、ネット証券が目指す次なるステージ
手数料がゼロになる一方で、証券会社のビジネスモデルは大きな転換を迫られています。かつては売買の仲介で稼ぐのが主流でしたが、今後は投資信託を保有している間にかかる「信託報酬」の分配や、お金を貸し出した際の「金利収入」が主役になります。つまり、顧客に頻繁な売買を強いるのではなく、じっくり資産を育ててもらう方向へ舵を切ったのです。
マネックスグループの松本大社長は、預かり資産の残高に応じて収益を得るモデルへの転換を明言しています。単なる「注文の窓口」から、顧客の資産形成を助ける「パートナー」へと脱皮しようとしているわけです。私自身の見解としても、この変化は健全な投資文化の醸成に繋がると確信しています。手数料を稼ぐための無理な勧誘が減ることは、投資家にとって最大のメリットです。
ただし、この流れは野村證券や大和証券といった対面型の大手証券会社には猛威となります。窓口での丁寧な接客にコストをかける従来のスタイルは、ネット証券の価格破壊の前で苦境に立たされるでしょう。今後は「富裕層向けの超高度なアドバイス」に特化するか、徹底したデジタル化に追随するか、二極化がさらに進むのは間違いありません。
先行する米国では、信用取引の金利が非常に高く設定されており、手数料無料でも利益が出る構造が出来上がっています。一方、日本はまだリスク資産への投資割合が低く、各社とも手探りの状態です。しかし、2019年12月のこの決断が、日本人の眠れる現預金を投資へと向かわせる強力な追い風になることは間違いないでしょう。
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