お気に入りの服を選ぶように、自分らしい「家」を選ぶ時代が到来しています。「無印良品」を展開する良品計画や、セレクトショップ大手のユナイテッドアローズといったアパレル・雑貨の巨頭たちが、今こぞって住宅事業への攻勢を強めているのをご存知でしょうか。かつては衣料品が消費の主役でしたが、人々の関心は今、単なるモノから「暮らしの空間そのもの」へと劇的にシフトしているのです。
SNS上では「無印の家なら家具選びに迷わなくて済む」「憧れのアパレルブランドの世界観に住めるなんて夢のよう」といった、期待に満ちた声が数多く寄せられています。2019年10月17日現在、こうした異業種による住空間ビジネスは、ファンを囲い込むための新たな戦略として大きな注目を集めています。服を買うという日常の延長線上に、一生モノの買い物が位置づけられようとしているのです。
無印良品が放つ平屋の新星「陽の家」の衝撃
良品計画の子会社であるMUJI HOUSEは、2019年09月に待望の新商品「陽の家」を発売しました。これは2004年に住宅事業をスタートさせて以来、実に5年ぶりとなる新作です。現代の多様なライフスタイルに寄り添う「平屋建て」を採用しており、仕切りのない一室空間を自分好みにレイアウトできる柔軟性が最大の魅力でしょう。無印良品の店舗で売られているキッチン用品が、そのまま美しく収まる設計は圧巻です。
「陽の家」は床面積約80平方メートルで、本体価格は1598万円(税別)からと、決して衝動買いできる金額ではありません。しかし、2019年02月期の住宅関連売上高は49億円に達し、30代後半の熱烈なファンを中心に年間300棟ほどが売れるまでに成長しました。家というハコを作るだけでなく、そこでの暮らしに欠かせない雑貨や家具までを一貫して提案する。これこそが、他社には真似できない彼らの強みなのです。
リノベーションで実現する「自分だけのセレクトショップ」
一方で、ユナイテッドアローズは2017年から、中古マンションを蘇らせる「リノベーション」事業に注力しています。リノベーションとは、既存の建物に大規模な工事を行い、性能を向上させたり価値を高めたりすることを指します。店舗デザインで培った卓越したセンスを住まいに応用し、自社の家具とセットで販売するスタイルは、こだわり派の層から絶大な支持を得ています。
価格帯は4000万円から1億5000万円超と高額ですが、ブランドの世界観を丸ごと手に入れられる体験は唯一無二といえるでしょう。また、アダストリアの人気ブランド「ニコアンド」も、2018年から法人向けの空間コーディネートを開始しました。ホテルやオフィスを自社ブランドの色に染めることで、店舗以外の場所でも消費者との接点を増やし、ブランドの浸透を図る巧みな戦略が垣間見えます。
編集者の視点:逆風の住宅市場で見せる「ブランド」の底力
統計を見ると、2018年の衣料品への支出は10年前より2割も減少しています。一方で、住まいの修繕や家具への支出は増加傾向にあります。2019年08月の新設住宅着工戸数が前年比で7.1%減少するなど、住宅市場全体には厳しい風が吹いていますが、だからこそ「誰から買うか」というブランドの信頼性が重要になっています。私は、こうしたアパレル各社の挑戦を、単なる多角化ではなく、顧客の人生に深くコミットする覚悟の現れだと感じます。
住宅という大きな買い物を入り口に、日々の生活雑貨や服まで、すべてのライフサイクルをひとつのブランドが支える。この「囲い込み」が成功すれば、ファンにとってブランドはもはや消費の対象ではなく、人生のパートナーになるでしょう。少子高齢化という課題はありますが、付加価値の高い「暮らしの提案」ができる企業が、これからの市場を牽引していくのは間違いありません。
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