日本のビジネス界を揺るがした大手企業の会計不祥事を受け、大きな注目を集めていた「監査法人のローテーション制度(交代制)」の導入が、当面見送られる方針となりました。金融庁はこれまで、企業と監査法人の癒着を防ぐ切り札としてこの制度を慎重に検討してきました。しかし、企業側の負担増に対する根強い反発などを考慮し、2020年01月15日までに導入時期尚早との判断を下した模様です。
そもそも会計監査とは、独立した公認会計士が企業の決算書を第三者の視点で厳しくチェックし、投資家へ情報の正しさを保証する極めて重要な仕組みのことです。同じ監査法人が長年担当し続けると、関係が深まりすぎて不正を見逃す「なれ合い」が生じるリスクがあります。そのため、一定の期間で強制的に監査法人を変えさせるのが、今回議論となった交代制です。
この決定に対し、SNS上では「不正防止のために義務化すべきだったのでは」と不満を漏らす声が多く上がっています。その一方で、「監査法人が変わるたびに膨大な書類をゼロから引き継ぐのは、現場の負担が大きすぎる」と、金融庁の判断に理解を示す書き込みも目立ちました。制度の理想と実務の現実との間で、ユーザーの意見も大きく割れている印象を受けます。
企業側を代表する経団連も、交代の手間やコスト増加を理由に難色を示していました。実際のところ、監査業務には高度な専門知識と対象企業への深い理解が欠かせません。法人を強制的に交代させてしまうと、これまでの経験や知識の蓄積がリセットされてしまい、結果として監査の質が落ちてしまうという専門家からの懸念の声も非常に根強かったのです。
さらに、日本の監査市場が抱える特有の構造問題も、今回の見送りに拍車をかけました。現在、国内の上場企業の大部分は「ビッグ4」と呼ばれる大手4法人が独占している状態です。欧州連合では2016年に上限10年とする交代制を導入しましたが、日本では仮に大手を変更したくても、次を任せられる同等規模の受け皿が不足しているのが実情でしょう。
現状では監査法人の交代を見送るものの、金融庁はすでに導入されているルールを厳格化する方針を打ち出しました。これは、同じ企業を担当する監査責任者(パートナー)を定期的に代えさせる制度です。これまでも最長7年で交代する決まりでしたが、実際には補助者として長年関わり続けるなど、ルールの「抜け穴」とも言える実態が調査で浮き彫りになりました。
こうした形骸化を防ぐため、日本公認会計士協会は業務の定期検証といった改善策を詰め、2020年04月以降の適用を目指して動き出しています。また、企業の負担を減らすための引き継ぎの簡米化も進める計画です。不正の抑止と現場の業務効率化をどのように両立させるか、これからの具体的な運用のブラッシュアップに注目が集まります。
私個人の意見として、今回の金融庁の見送り判断は、実務の混乱を避ける現実的な対応であったと評価しています。形式的な交代を義務付けるだけでは、形式破りな抜け穴を探すイタチごっこになりかねません。それよりも、2021年03月期から導入される「なぜ適正と判断したか」の理由説明など、監査のプロセス自体を透明化していくアプローチこそが本質的です。
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