企業の財務諸表が正しく作成されているかをチェックする「監査」のあり方を巡り、現在大きな議論が巻き起こっています。2019年11月19日、日本公認会計士協会の手塚正彦会長は記者会見の場において、特定の期間ごとに監査法人を強制的に交代させる「監査法人ローテーション制度」の導入に対し、極めて慎重な見解を表明されました。
この制度は、同じ監査法人が長期間にわたって一つの企業を担当することで生じる「なれ合い」や「癒着」を防ぐ目的で、すでに欧州などでは導入が進んでいます。しかし、手塚会長は「担当企業に関する知識の蓄積がリセットされることで、かえって重大な不正を見逃してしまう危険性がある」と、実務的な視点からその弊害を指摘しているのです。
知見の断絶が招くリスクと「社内交代」の有効性
そもそも「監査」とは、企業の複雑な会計処理を読み解く高度な作業であり、長年の経験に基づく企業文化や業界特有の慣習への理解が不可欠と言えるでしょう。交代直後はどうしても調査の精度が不安定になりがちです。SNS上でも「新鮮な視点は大切だが、引き継ぎ不足で粉飾が見逃されるのは本末転倒だ」といった、制度の副作用を懸念する声が目立っています。
そこで手塚会長が代案として理解を示したのが、法人そのものを変えるのではなく、同じ法人内で担当者を入れ替える「社内ローテーション」の強化です。これは「パートナー」と呼ばれる監査責任者だけでなく、現場で実務を担うチームメンバー全員を必要に応じて刷新することで、組織としての知見を保ちつつ客観性を担保しようとする現実的なアプローチです。
私個人の意見としては、単に看板(法人名)を掛け替えるだけの形式的な改革よりも、実質的なチェック機能がどう働くかに焦点を当てるべきだと考えます。不正は「慣れ」からも生まれますが、「無知」を突いて発生することも多いからです。日本市場の透明性を高めるためには、硬直的な制度導入よりも、現場の専門性を維持できる柔軟な仕組み作りが求められているのではないでしょうか。
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