脱炭素と経済成長のジレンマ!発電用石炭の価格差縮小が映し出す先進国と新興国のリアルな今

エネルギー市場で、今まさに大きな地殻変動が起きています。発電に使われる石炭、いわゆる一般炭のアジア市場において、品質による価格差がわずか1年で3分の1にまで一気に縮小したのです。ネット上でも「環境対策の理想と経済の現実が数字に出ている」と、大きな話題を呼んでいます。

この現象の背景にあるのは、世界的な「脱炭素」への取り組みの温度差です。実は石炭には、燃やしたときの熱量が大きい「高品位炭」と、熱量が小さく割安な「低品位炭」が存在します。これまで日本などの先進国は、発電効率が良く二酸化炭素の排出を抑えられる高品位炭を多く輸入してきました。

しかし、地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」の運用が本格化し、先進国では再生可能エネルギーや液化天然ガス(LNG)への転換が猛烈な勢いで進んでいます。その結果、2020年01月15日現在、最高水準のオーストラリア産高品位炭は1トン65ドル前後まで下落し、2018年12月時点と比べて3割以上も値下がりしました。

一方で、新興国の事情はまったく異なります。中国やベトナム、インドなどでは劇的な経済成長に伴い、電気の消費量が爆発的に増えているのです。特にベトナムでは、貿易摩擦を背景に中国から工場を移転する動きも重なり、2019年の一般炭輸入量が前年比で2倍に急増するという驚異的なデータも出ています。

彼らの電力を支えているのが、発電コストを低く抑えられる低品位炭です。新興国からの旺盛なラブコールに支えられ、低品位炭の価格は1トン52ドル前後を維持しており、値下がりはわずか13%程度にとどまります。この需要の強さが、高品位炭との価格差を急速に縮める原動力となりました。

こうした需要があるにもかかわらず、資源会社は価格が低迷する低品位炭の増産には消極的で、少しでも利益が出る高品位炭の生産に舵を切っています。ネットでは「安価なエネルギーを求める新興国を責められない」「供給のミスマッチが起きている」といった、冷徹な現実を指摘する声が目立ちます。

国際エネルギー機関(IEA)の予測では、2030年に向けて世界の石炭需要は微増するとされています。先進国がどれだけ削減しても、東南アジアなどがそれを上回る勢いで消費を増やす見通しだからです。環境負荷が高いとされる低品位炭ですが、調達先を分散できるという安全保障上の利点も見逃せません。

日本の電力会社もコスト削減のために低品位炭の活用を模索し始めており、これはもはや他国の問題ではありません。私は、先進国が理想を押し付けるだけでなく、新興国が経済成長を維持しながら環境負荷を減らせるような「クリーンな発電技術」を官民一体で提供していくべきだと強く感じます。

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