老舗が教える本格出汁の魅力!長野の「能登重鰹節店」が300年の歴史を未来へ繋ぐ秘訣とは?

和食の基本でありながら、現代の家庭では少しハードルが高く感じられがちな「出汁」。そんな日本の豊かな食文化を、江戸時代から300年以上にわたって守り続けている場所があります。長野市の大門交差点近くに店を構える「能登重鰹節店」です。

店頭に掲げられた見事な看板は、夏目漱石の小説『吾輩は猫である』の挿絵などで知られる著名な画家、中村不折が手掛けたものだそうです。一歩店内に足を踏み入れると、芳醇な鰹節の香りが五感を包み込み、訪れる人々をタイムスリップしたような感覚に誘います。

現在の当主である10代目の石坂正志社長によると、創業は1700年代の江戸中期にまで遡ります。初代の石坂重次郎氏が1760年(宝暦10年)に亡くなったという記録が残されており、まさに地域の歴史とともに歩んできた本物の老舗といえるでしょう。

しかし、時代の変化とともに人々のライフスタイルは大きく変わりました。総務省の家計調査によると、2018年(平成30年)の鰹節・削り節の世帯年間購入額は701円となり、2007年(平成19年)と比較して17%も減少していることが判明しています。

一方で、利便性の高い「つゆ・たれ」の購入額は23%増加の3845円、「風味調味料」も24%増加の1830円と急成長を遂げました。このデータからは、出汁の需要そのものが減ったのではなく、より手軽なものへと移行している世相が顕著に表れています。

こうした背景から、ネット上では「自分で出汁をとってみたいけれど、やり方が分からない」「ハードルが高そう」という声が数多く上がっています。ライフスタイルが変化する中で、本物の味を知る機会が失われつつある現状には、どこか寂しさを禁じ得ません。

そこで能登重鰹節店では、栄養士と調理師の資格を持つ社長夫人の晶子さんが中心となり、出汁のとり方を伝える啓発活動に注力しています。高校の授業や様々なイベントでの実演講座は、多くの人々に職人の技を身近に感じてもらう素晴らしい試みです。

利便性を追求する現代において、あえて手間暇をかけて出汁をとる行為は、日々の暮らしを豊かにする最高の贅沢ではないでしょうか。丁寧にとられた本物の出汁の美味しさは、インスタントでは決して味わえない深い感動を私たちに与えてくれます。

時代のニーズに合わせて削り節の袋詰めを主力にするなど、柔軟に変革を遂げながらも根幹の伝統を決してブレさせない姿勢こそが、老舗が存続し続ける真の理由だと確信します。この美しい和の文化が、次の世代へと無事に継承されることを願ってやみません。

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