自動車の心臓部を支える日本のものづくり企業が、世界を舞台に大きな飛躍を遂げようとしています。軸受けのグローバルリーダーである大同メタル工業が、アメリカのエンジン製造大手であるカミンズ社から、大型車両用の軸受けを初めて勝ち取ったことが2020年1月20日に明らかになりました。このニュースに対し、SNS上では「日本の高い技術力が世界に認められた」「地味だけど社会を支える超重要パーツ、頑張ってほしい」といった熱い応援の声が相次いで寄せられています。
そもそも軸受けとは、エンジン内部で激しく回転するシャフトを滑らかに支え、摩擦によるエネルギーのロスや焼き付きを防ぐ極めて重要な金属部品のことです。大同メタル工業は、乗用車用エンジンの「すべり軸受け」において世界市場の33%を握る圧倒的なトップランナーとして君臨しています。しかしその一方で、大型のトラック向け市場におけるシェアはこれまで12%に留まっており、同社にとってここはまさに、これから開拓すべきブルーオーシャンだったと言えるでしょう。
今回舞い込んだ注文は、排気量が12リットル前後の大型エンジンに使用されるもので、アメリカと中国の2大市場に向けて供給される予定です。実はエンジンが巨大化するほど、パーツにかかる圧力や熱などの負荷は爆発的に跳ね上がります。それゆえに極めて高度な職人技とも言える製造技術が必須となりますが、参入障壁が高い分だけ、ビジネスとしては非常に利益率が高くなりやすいという大きなメリットがあるのです。
このビッグチャンスを足がかりに、同社は2022年3月期までにトラック部門の売上高を現在の実績から4割も引き上げ、70億円規模にまで成長させる青写真を描いています。同時に、トラック向け軸受けの世界シェアも17%程度まで引き上げる計画です。インターネット通販の普及によって物流の主役であるトラックの需要が世界中で爆発している今、この戦略は時代の潮流に見事に合致していると感じます。
中国の圧倒的な物流不足を追い風に次なる成長ステージへ
特に注目すべきは、巨大な人口を抱える中国市場のポテンシャルです。現在の中国では電子商取引、いわゆるECビジネスが猛烈な勢いで拡大を続けており、広大な国土をカバーするための物流網が圧倒的に不足しています。日本やヨーロッパでは人口1000人あたり40台から50台のトラックが走っているのに対し、中国ではまだ24台に留まっているというデータもあり、裏を返せばそれだけ巨大な伸び代が残されているということです。
世間では自動車の電動化が叫ばれていますが、重い荷物を運ぶ長距離トラックがすぐに電気自動車へ移行するのは技術的・インフラ的に容易ではありません。同社の判治誠吾会長兼最高経営責任者が「トラックがEVに変わるには時間がかかるため、軸受け事業を拡大するチャンスはまだまだ豊富にある」と語る通り、内燃機関が主役であり続けるトラック市場には、日本の老舗メーカーが輝くチャンスが色濃く残されています。
2019年3月期の連結決算で、大同メタル工業は売上高1077億円という過去最高の実績を叩き出しました。本業の稼ぎを示す営業利益は、前の期と比べてわずかに減ったものの65億円と、極めて堅実な経営を維持しています。これまでの乗用車頼みの構造から脱却し、中国のトラックメーカーとの取引を拡大していくことで、同社はさらなる安定した成長基盤を築き上げることができるのではないでしょうか。今後の展開から目が離せません。
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