就職活動において、安定した大企業への就職を望む声は根強く存在します。しかしその一方で、あえて規模の小さなスタートアップ企業を最初の職場に選ぶ若者たちがいます。彼らは決して高いお給料や楽な環境を求めているわけではありません。過酷な環境を顧みず、挑戦を求める若者の視点に迫ります。
SNS上では「若いうちから裁量を持って働けるのは魅力的」「大企業での下積みに時間を費やすのはリスク」といった、スタートアップへの就職を肯定的に捉える意見が多く見られます。変化の激しい現代を生き抜くために、自分自身の能力を高めたいという思いが、若者たちの間で共感を呼んでいるのでしょう。
大企業の安泰神話に疑問を抱く若者たち
九州大学の大学院を2019年3月に修了した大野雅志さんは、一度は大手自動車メーカーの内定を獲得されました。しかし、大企業に入社したものの数ヶ月で退職した先輩の話を聞き、衝撃を受けます。その先輩によると、社内では出世の心配や上司の顔色をうかがうことばかりが横行していたそうです。
組織の論理に流される人生で良いのか、大野さんは深く葛藤されました。そして、自らの存在価値を社会に直接還元したいという結論に達したのです。悩んだ末に、2020年1月には大企業の内定を辞退し、インターンシップを経験していた理系特化型の就活支援企業へ進む決断を下しました。
圧倒的な成長環境とフラットな組織の魅力
現在の大野さんは、営業やイベント運営のために多忙な日々を送られています。時には深夜まで企画に没頭することもありますが、大企業では得られない裁量の大きさに充実感を抱いています。日本の就職活動に変革を起こす一翼を担っているという誇りが、彼の原動力になっているのです。
また、東京大学の古座匠さんは、10人ほどの規模であるオンラインヨガ運営企業への入社を決められました。役職の垣根がないフラットな組織で働くことにこだわり、アナリスト兼ディレクターとして、若くして多岐にわたる重要な業務を任される日々に満足感をにじませています。
不確実な時代を生き抜くための「スキル獲得」
大手企業を志向する学生が半数を超える一方で、かつての名門企業が経営不振に陥るニュースも相次いでいます。さらに2019年5月には、経済界のトップたちが終身雇用の継続は難しいという見解を示しました。数十年先の未来が予測できない現代において、企業の看板に頼る危険性を若者たちは察知しています。
スタートアップ(独自の技術やビジネスモデルで急成長を目指す革新的な新興企業)を志望する背景には、早くから打席に立ちたいという成長欲求があります。大企業でありがちな「下積み」という名目の雑務から解放され、実戦経験を通じて市場価値を高めたいという戦略的な選択と言えるでしょう。
光の裏に潜むリスクと失敗しない企業分析
しかし、スタートアップへの就職は甘い世界ではありません。ある地方国立大学を2019年3月に卒業した男性は、都内のベンチャー企業に入社したものの、同僚が相次いで退職する事態に直面しました。さらに残業代の未払いなど労働環境の悪さも発覚し、同年12月に退職を余儀なくされています。
華やかなビジョンや上場という甘美な言葉を鵜呑みにしてしまうと、手痛い失敗を招きかねません。このような悲劇を避けるためには、経営者と直接対話し、その企業のビジョンだけでなく「競合他社とどこで明確な差別化を図っているか」を厳しく見極める視点が必要です。
編集部が考える「個の時代」のキャリア戦略
筆者は、この新卒たちの選択は極めて合理的であると考えます。これからの時代は、会社に守ってもらうのではなく「どこでも生き残れる個人のスキル」こそが最大の安定となるからです。もちろん、スタートアップは自ら仕事を作り出す姿勢が求められるため、万人に進められる道ではありません。
しかし、若いうちに泥臭い実務と圧倒的な当事者意識を経験することは、将来のキャリアにおける強力な武器になります。大手かベンチャーかという二元論ではなく、自分がどのような大人になりたいのかという軸を持って、悔いのない企業選びを行っていただきたいと切に願います。
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