日本のエネルギー業界がいま、劇的な変化の渦中にあります。電力とガスの小売り自由化によってこれまでの地域独占の壁が崩壊し、価格競争は激しさを増す一方です。国内の需要が頭打ちとなる中で、中部電力グループと東京電力ホールディングスが共同出資して2015年に発足した「JERA」は、海外市場に活路を見出そうとしています。彼らが武器として選んだのは、日本のお家芸とも言える「カイゼン」のノウハウでした。
フィリピンのルソン島南部にあるパグビラオ火力発電所は、同国全体の約1割の発電容量を担う重要な拠点です。JERAは2007年からこの地で運営に携わり、日本の製造業が培ってきた業務効率化の取り組みを移植してきました。SNSでも「日本のカイゼン精神が海外のインフラを支えているのは誇らしい」といった好意的な声が上がっています。効率的な運用は、これからの世界的なエネルギー支援の鍵になるでしょう。
具体的な取り組みとして、IoT技術を活用した予測保全システムが導入されました。これは、発電所内の圧力や温度などのデータを集めて不具合の兆候を事前に察知する仕組みのことです。従来のようにベテラン技術者の五感に頼るのではなく、デジタル化することで検査の精度が格段に向上しました。トラブルを未然に防ぐことで、結果的に膨大なメンテナンス費用や手間を削減することに成功しているのです。
さらに、JERAは現地のスタッフを日本に招き、定期検査の工程を短縮するための現場教育も徹底しています。作業を効率化するためには、システムだけでなく働く人々の意識改革が欠かせないという判断からです。このようにして培った生産性向上のノウハウを、同社は出資している世界約10カ国の火力発電所へと広げていく方針を掲げています。これは、単なる電力供給ビジネスを超えた素晴らしい技術移転の試みだと私は確信しています。
世界的な脱炭素の逆風を乗り越える日本の技術力
現在、世界のエネルギー業界には温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「脱炭素」という強い逆風が吹き荒れています。環境負荷の大きい火力発電に対する風当たりは厳しいですが、だからこそJERAの役割は重要です。カイゼンによって燃料の無駄をなくし、燃費を向上させることは、二酸化炭素の排出量を直接減らすことにつながります。環境保護と現実的な電力安定供給を両立させる現実的なアプローチと言えます。
JERAは2026年3月期を目標に、純利益を2020年3月期の見込みから倍増となる2000億円まで引き上げる野心的な計画を進めています。この成長を牽引するのが海外事業であり、利益全体に占める海外比率を3割にまで高める算段です。出資元の利益を大きく左右する存在へと急成長しており、日本のエネルギー企業がグローバル競争を生き抜くための先頭集団として、多大な期待が寄せられています。
一方で、中部電力本体も負けてはいません。2019年11月には三菱商事と共同で、欧州の電力大手であるエネコ社の買収に関する優先交渉権を獲得しました。総額5000億円にのぼる過去最大のM&A(企業の合併・買収)であり、中部電力はそのうち1000億円を出資します。自由化が進む本場欧州の知見を取り入れ、国内ビジネスへ還元しようという大胆な戦略には、業界内からも驚きの声が上がりました。
エネコ社は環境に優しいグリーン電力の供給で先駆的な実績を持つ企業です。中部電力はこうした海外企業の先進的な販売ノウハウを吸収し、2020年代後半には海外事業の経常利益を過去の倍以上に増やすビジョンを描いています。日本のエネルギー会社が「地域の内弁慶」から脱却し、世界を舞台に躍動する姿は非常に頼もしく、これからの持続的な成長が本当に楽しみでなりません。
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