「リーダーなら夢を語れ」という力強い言葉を胸に、大分大山町農協を率いるのが矢羽田正豪組合長(72歳)です。山間部という不利な立地を跳ね返し、農業を起点とした地域活性化の旗振り役として注目を集めています。独自のアイデアで次々と変革をもたらす姿に、SNSでも「これぞ理想の地域リーダー」「定年後にこんな場所で働きたい」といった称賛の声が相次いで寄せられました。農村の未来を切り拓くその熱い挑戦に迫ります。
同農協の代名詞とも言えるのが、直売所「木の花ガルテン」の大躍進でしょう。1990年度のオープン当初は6800万円だった売上高が、2018年度には16億円を超えるまでに急成長を遂げました。現在は10店舗を展開し、年間240万人もの人々が訪れる超人気スポットとなっています。収穫日や生産者の名前を明記する徹底した安心感が、多くの消費者の心を掴んだ結果と言えます。
農業の「6次産業化」がもたらす豊かな農村の姿
ここで注目したいのが、同農協が早くから着手してきた「6次産業化」という仕組みです。これは、農業などの1次産業(生産)が、2次産業(加工)や3次産業(販売・観光)までを一体的に手がける経営手法を指します。矢羽田組合長は、かつて「梅栗植えてハワイに行こう」を合言葉に果樹栽培へ転換し、キノコやハーブなどの多品種少量生産を定着させました。自ら加工工場を立ち上げ、付加価値を高めて販売する流れを築いたのです。
2019年12月からは、高齢者の雇用とコミュニティーの核作りを目指す「文産農場」事業をスタートさせました。この農場では、お年寄りにクレソンやハーブの栽培を担当してもらい、木の花ガルテンで販売する計画です。「月に10万~15万円の収入をお年寄りに届けたい」という明確な目標を掲げています。単なる労働の場ではなく、生きがいを持って収入を得られる仕組みづくりが実に見事です。
さらに、ハウスの隣には冷暖房を完備した作業場兼休憩談話室も整備されます。臨時職員以外のお年寄りにも開放され、農作業を少し手伝うだけでも月に2万~3万円の給料が支払われる仕組みです。若い頃の思い出や孫の話でワイワイと盛り上がれる場所を作ることで、孤独を防ぎ、笑顔が絶えない地域社会を目指しています。福祉と農業が美しく融合した、まさに理想的な地方創生のモデルと言えるでしょう。
リスクを恐れず夢を語るリーダーシップ
矢羽田組合長の挑戦はこれだけに留まりません。日田市内には約30ヘクタールもの広大な山を活用した「五馬媛の里」の整備を進めています。200種類以上の花や木を植え、遊歩道を設けることで、地域外からの交流人口を増やす試みです。リスクを恐れずに大きな目標へ挑戦し、分かりやすい言葉で夢を語り続けることこそが、これからの時代に求められるリーダーの資質ではないでしょうか。
少子高齢化が進む日本の地方において、ただ縮小を待つのではなく、攻めの姿勢で輝きを放つ大分大山町農協の取り組みは大きな希望です。お年寄りが主役となり、心安らぐ豊かな農村を築き上げるという使命感を胸に、矢羽田組合長の歩みは止まりません。私たちはこの先進的な事例から、地域コミュニティーが再生するための多くのヒントを学ぶことができるはずです。
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