新潟県柏崎市に拠点を構える産業用印刷機メーカーのトライテックが、プラスチックなどの軟包装材に特化した画期的な新型印刷装置を開発しました。2020年2月に発売される「Roll JET―FP」は、環境負荷と運用コストを劇的に抑えた注目の最新鋭マシンです。
近年、スマートフォンの普及やデジタル化に伴い、国内の印刷市場全体は縮小傾向にあります。しかし、高齢化や単身世帯の増加を背景に、手軽に食べられるお惣菜などの「中食(なべしょく)」市場が拡大しており、食品包装向けの需要は非常に堅調な伸びを見せているのです。
SNS上でも「食品の安全に関わる包装だからこそ、エコで安心な技術が普及してほしい」「地元のモノづくり企業が最先端の挑戦をしていて素晴らしい」といった、期待を寄せる声が多数上がっています。食の安全への関心が高まる現代において、この開発はまさに時流を捉えた英断でしょう。
この新型機が注目を集める最大の理由は、花王が開発した次世代の水性インク「LUNAJET(ルナジェット)」を採用している点にあります。これまでの軟包装フィルム印刷では、水分を弾く素材の特性上、紫外線で硬化させる「UVインク」を使用するのが一般的でした。
しかし、従来のUVインクは独特の臭いが残りやすく、デリケートな食品用のパッケージには不向きであるという課題を抱えていたのです。さらに、人体や環境に悪影響を及ぼす「VOC(揮発性有機化合物)」というガスが排出されるリスクも指摘されていました。
VOCとは、大気汚染や健康被害を引き起こす原因となる有機溶剤などの化学物質のことです。今回採用された水性インクは、このVOCの排出量を極限まで抑えることに成功しており、工場で働く作業員の皆さんの就労環境を大幅に改善する画期的な優れモノとなっています。
水性インクの弱点だった「乾きにくさ」についても、トライテックの高度な技術力で見事に克服されました。インクの粒を極限まで小さくしてフィルムに定着しやすくしたほか、印刷の前後で素材を温める特殊な機能を搭載し、わずか数秒での超高速乾燥を実現しています。
さらに、経営的な観点からもこの新型機は非常に魅力的です。高橋一義社長によると、水性インクの価格は従来のUVインクに比べて半分以下に抑えられるため、毎日の運用コストを大幅に削減できます。本体価格は1億円前半で、年間2から3台の納入を目標に掲げています。
持続可能な社会を目指すトレンドは、すでに大手食品メーカーにも波及しています。例えば菓子大手のブルボンでは、すでに一部のお煎餅などのプラスチック包装に水性インクを導入しており、業界全体で環境に配慮した包装への切り替えが急速に進むことは確実でしょう。
経済産業省などのデータでは、2020年の食品向け軟包装市場は2015年比で6・1%増の5191億円に達すると推計されています。市場が縮小する印刷業界において、この成長分野へいち早くエコな専用装置を投入するトライテックの戦略は、極めて的確だと感じます。
同社は2022年までに3億円を投じて本社工場を拡張し、生産体制を強化する構えです。2020年2月期の売上高は12億円を見込み、2023年には19億円への拡大を目指しています。地方から世界へ安心を届ける同社の挑戦から、今後も目が離せません。
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