スマートメーターの電力データが未来を拓く!在宅状況を可視化する「宝の山」のビジネス活用最前線

私たちの生活に欠かせない電気が、今やエネルギーの枠を超えて驚くべき価値を生み出そうとしています。東京都内にある、とある場所には、様々な業界から新規事業の担当者が続々と足を運んでいます。その目的は、東電ホールディングスとNTTデータが2018年11月15日に共同で設立した「グリッドデータバンク・ラボ」です。ここは、次世代のインフラから得られるビッグデータをビジネスにどう活かすか、熱い実証実験が繰り広げられている最前線なのです。

SNS上でもこの取り組みは大きな話題を呼んでおり、「電気の使い方だけで帰宅時間がバレるのは少し怖いけれど、宅配の再配達がなくなるなら大歓迎」「コンビニの時短営業の根拠になるのは合理的で素晴らしい」といった、期待と驚きの声が多数寄せられています。人々の関心を集める背景には、2024年までに全国の家庭へ導入される予定の「スマートメーター」があります。これは通信機能を備えた新しい電力計のことで、従来のように検針員が訪問しなくても、遠隔で電気の使用量を計測できる優れものです。

このスマートメーターの登場により、30分ごとの電力消費データという詳細な情報が自動的に記録できるようになります。これにより、昼間は料金を高くし、夜間は安く設定するといった、ライフスタイルに合わせた柔軟な電気料金プランの提供が可能になるでしょう。さらに、地域全体の電力需要を極めて正確に予測できるようになるため、電力会社としては無駄な発電設備を稼働させる必要が減り、大きなコスト削減や環境負荷の軽減にもつながると期待されています。

しかし、このデータの真価は電力業界以外でこそ発揮されます。大手小売業では、どの地域に新しいお店を出せば繁栄するか、あるいは時間帯ごとにどのような商品を並べるべきかという戦略にこのデータを活用し始めています。例えば、特定の地域で夕方に一斉に電気使用量が上がるデータがあれば、そこには夕方に帰宅する世帯が多いと判断できます。つまり、「このエリアなら、帰宅時間に合わせておにぎりや総菜が売れるはずだ」といったデータに裏付けられた出店や販売が可能になるのです。

また、深刻な人手不足に頭を悩ませているコンビニエンスストア業界にとっても、このデータは救世主となる可能性を秘めています。客足が遠のく効率の悪い営業時間帯をデータによって明確に割り出すことができれば、経営者は確かな根拠を持って営業時間を短縮し、深夜閉店などの決断を下せるようになります。さらに、物流企業からもこのデータに対して熱烈な視線が注がれています。事前に在宅率が把握できれば、留守の家を避けた効率的な宅配ルートを組み立てられるからです。

ラボに携わる東京電力の山口哲生マネージャーは、このデータについて「ほぼリアルタイムで在宅率を把握でき、なんと国勢調査よりも高い精度で正確な世帯数を割り出すことができる」と、その驚異的なポテンシャルに太鼓判を押しています。実際にその注目度は凄まじく、ラボの設立から1年強が経過した現在、家電メーカーや金融機関など、業界の垣根を越えてすでに90もの企業や団体が参画しています。まさに、未来のビジネスを動かす巨大なエネルギーがここに集約されているのです。

日本国内では2016年04月01日に電力を自由化する法改正が行われ、新興の電力会社が大手から契約を奪うなど競争が激化しています。東京電力は2020年度からスタートさせる新しい中期経営計画において、この電力データの活用を経営立て直しの重要な柱として位置づける方針です。こうした民間企業の動きを後押しするように、国も法整備を進めています。電気事業法という法律では、本来は電力会社が個人の利用状況を外部に漏らすことを厳しく禁じています。

そこで政府は例外規定を設け、個人の明確な同意が得られた場合に限り、データを外部企業へ提供できるよう法律を改正する方針を固めました。現在、このラボには東京電力だけでなく、関西電力や中部電力も出資を行っており、残る大手7電力会社もすべて参画する形となっています。ただ、電力データは送配電のインフラを持つ限られた事業者しか取得できないため、現状は大手電力会社による事実上の独占状態です。そのため、業界内ではこれを「宝の山」と呼ぶ声が上がっています。

人口減少などで本業の電力販売の大幅な成長が見込めない中、大手がこのデータビジネスに活路を見出そうとするのは当然の戦略と言えるでしょう。しかし、世界に目を向けると個人情報の取り扱いに対する風当たりは日に日に強まっています。米国のフェイスブックやグーグルがネット上の個人データを独占して巨大な権力を得たように、日本の電力会社がデータを独占すれば、社会的な批判や反発を招く恐れがあるという懸念は払拭できません。

海外の先行事例を見ると、米国ではスマートメーターのデータを電力会社からベンチャー企業などが取得できる制度がすでに確立されています。消費者は自身の判断で電力を提供し、それに見合った便利なサービスを受け取っています。私は、日本も単に企業が利益を得るためだけでなく、消費者に利便性や安心という形でしっかりと還元されるエコシステムを構築すべきだと強く確信しています。ビジネスモデルの転換を迫られる日本の電力会社が、真に豊かな社会を築く道筋を描けるか注目です。

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