2019年06月28日の午前10時20分ごろ、大阪の国際展示場「インテックス大阪」は、G20サミットの熱気に包まれていました。インドのモディ首相との会談を終えたアメリカのドナルド・トランプ大統領は、周囲も驚くほどの足取りで控室へと急ぎます。その目的は、遠く離れた米南部フロリダ州で開催されていた、民主党の候補者によるテレビ討論会をチェックするためでした。
討論会の中で、全候補者が不法移民への医療保険提供を肯定する場面を目にすると、トランプ氏は即座に反応を示します。「米国民を最優先にすべきではないのか」と、痛烈な野次をツイッターで発信したのです。わずか10分ほどのテレビ観戦で戦況を把握すると、彼は何食わぬ顔でドイツのメルケル首相との会談へと向かいました。この神出鬼没な動きこそ、彼の真骨頂と言えるでしょう。
SNS上では、このトランプ氏の即時反応に対して「相変わらずのSNS戦略だ」「サミット中も選挙のことが頭から離れないのか」といった驚きや呆れの声が渦巻いています。しかし、この執念とも言える行動の裏側には、実は強い焦燥感が隠されているようです。2019年の春に実施された内部の世論調査では、再選の鍵を握る重要州でジョー・バイデン氏に敗北するという衝撃的な予測が出ていたからです。
「データより直感」を信じるギャンブラーの再選戦略
トランプ氏は、自分に不利な調査結果を突きつける側近に対し「そんな調査はなかったことにしろ」と不満を爆発させたといいます。2016年の大統領選を勝ち抜いた成功体験があるからこそ、彼は緻密なデータ分析よりも自分自身の「直感」を何よりも信じているのでしょう。2019年06月中旬のインタビューでも、彼はダイエットコーラを片手に「政治は直感がすべてだ」と言い切りました。
彼の哲学において、選挙スタッフは自らの直感を実現するための実行部隊に過ぎません。自身の人生を「賭博そのもの」と称するように、複雑な戦略を立てるよりも、その時々の損得勘定を瞬時に弾き出すことを優先しています。2019年06月20日の夜、イランへの空爆を直前で撤回した決断も、戦争が再選に悪影響を及ぼすというメディアの助言を直感的に取り入れた結果でした。
この「直感政治」の矛先は、いま中国にも向けられています。トランプ氏は2019年05月上旬に2000億ドル相当の中国製品への関税上乗せを決定し、さらに全製品への制裁拡大も示唆しています。対中強硬姿勢を強める背景には、対立候補のバイデン氏が「中国は脅威ではない」という趣旨の発言をした隙を突き、経済成長を多少犠牲にしてでも対抗馬を叩くという、冷徹な計算が働いています。
私は、このようなトランプ氏の政治手法は、一見危うく見えながらも現代のスピード感には合致していると感じます。論理よりも感情や直感で動くリーダー像は、支持者には力強く映るでしょう。しかし、一国の命運を左右する外交や経済政策が、個人の勝負師としての勘だけで決まっていく現状には、危うさを感じざるを得ません。この「賭け」が2020年にどのような結末を迎えるのか、目が離せません。
コメント