2019年6月3日の記者会見で、当時の菅義偉官房長官が示した見解は、永田町に大きな波紋を広げました。それは、安倍晋三首相が省庁幹部らと官邸内で面会した際のやり取りについて、首相官邸が記録を作成していない、という驚きの事実です。政府の活動の透明性を担保し、後世に歴史的な検証を可能にする公文書管理の重要性が叫ばれる中で、この事実は多くの人々に懸念を抱かせたに違いありません。この問題は、公文書管理のあり方、ひいては行政の信頼性に直結する重要な論点でしょう。
菅官房長官は、面会記録を作成しない理由として、「打ち合わせ記録は、その政策を所管する行政機関が、公文書管理法に基づいて必要に応じて作成する」と説明されました。これは、記録作成の責任と主体は、政策を実行する各省庁にあり、官邸自体がすべての面会内容を網羅的に記録する立場にはない、という認識を示していると言えるでしょう。しかし、国の最高責任者である首相と、実務を担う幹部との重要な意思決定の場である官邸での面会記録は、国の政策決定過程を知る上で極めて高い価値を持つはずです。その記録が官邸側に一切残されないという状況は、情報公開やアカウンタビリティ(説明責任)の観点から、不十分であると言わざるを得ません。
この官房長官の発言は、各種インターネットメディアやSNS上でも大きな反響を呼びました。特に「#公文書管理」「#面会記録」といったハッシュタグとともに、「行政のトップである首相の行動が記録されないのはおかしい」「後から検証できなければ歴史が歪む」といった、情報公開や民主主義の根幹に関わる懸念を示す意見が目立ちました。多くの国民は、政府がどのような過程を経て政策を決定しているのかを知る権利があり、その情報が曖昧になることは、国民と行政との間の信頼関係を揺るがすことになりかねません。これは、「誰が、いつ、何を決定したのか」を明確にする公文書管理の精神に照らして、再考すべき課題ではないでしょうか。
公文書管理法とは、行政機関における文書の作成、保存、そして情報公開に関するルールを定めた、重要な法律です。その目的は、行政が担う説明責任を全うさせ、国民の知る権利に奉仕し、健全な民主主義の発展に役立てることにあります。今回の件で焦点となっている「必要に応じて作成する」という解釈は、何を「必要」と見なすかによって、記録の有無が大きく左右される危うさを内包しています。私見ですが、首相と省庁幹部との面会は、政策の方向性を決定づける最重要事項の一つであり、記録作成の必要性は常に高いと判断すべきです。行政の透明性を高め、後の世代への説明責任を果たすためにも、官邸自身による一定の記録作成のルール化が急務と言えるでしょう。**「記録なきは記憶なし」**という言葉の重さを、改めて認識する必要があります。
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