ネット通販の勢力図を揺るがす大きな嵐が吹き荒れています。ECモール大手の「楽天市場」が打ち出した新たな方針を巡り、運営側と出店者の間で深刻な対立が勃発しました。この騒動はSNS上でも「買いやすくなるのは嬉しいけれど、お店が潰れたら意味がない」「送料無料の裏にあるコストを消費者も知るべきだ」など、多くのユーザーを巻き込んだ大論争へと発展しています。
事の発端は、楽天が2020年3月18日から導入を予定している新しい一律ルールです。消費者が楽天市場内で3980円以上買い物をした場合に、一律で「送料無料」と表示する仕組みを導入すると発表しました。ユーザーの利便性を高めて購入率を向上させたいという狙いですが、この施策が現場の店舗に大きな動揺を与えているのです。
こうした動きに対して、出店者たちが結成した任意団体「楽天ユニオン」は2020年1月22日、驚きの行動に出ました。この規約変更が独占禁止法に違反しているとして、公正取引委員会に調査を求めたのです。さらに彼らは、立場が強い企業が取引先に対して不当に不利益を強いる「優越的地位の乱用」に該当すると主張し、排除措置請求書も合わせて提出しました。
専門用語である「優越的地位の乱用」とは、市場で圧倒的なパワーを持つプラットフォーマーが、立場の弱いパートナーに対して無理な条件を一方的に押し付ける行為を指します。もしこれが認められれば、法的なペナルティが科される可能性もあるため、非常に重い問題と言えるでしょう。ユニオン側は1700筆を超える反対署名を集め、徹底抗戦の構えを見せています。
あるベテラン出店者によれば、梱包や倉庫の維持、決済手数料などで出荷1件あたり1600円もの経費が発生しているそうです。これまでは高額な購入時のみ送料を無料にして凌いできましたが、新ルールが適用されれば売れば売るほど赤字になる店舗が続出すると危機感を募らせています。安易に商品価格へ送料を上乗せすれば、今度は景品表示法という別の法律に触れる恐れもあります。
対する楽天がここまで頑なな姿勢を崩さない背景には、宿敵であるアマゾンジャパンへの猛烈な焦りが透けて見えます。あちらは2018年だけで3千億円以上を物流網の整備に投じており、直販ビジネスを強みに2000円以上の購入で手軽に送料無料を実現しています。2019年11月時点の利用者数調査でもアマゾンが優位に立っており、楽天側は何としても巻き返しを図りたいのです。
編集部が見るEC業界の未来とプラットフォーマーのあり方
今回の問題の本質は、利便性を追求するあまりに「誰がそのコストを支払うのか」という議論を置き去りにしてしまった点にあります。アマゾンの背中を追いかける楽天の焦りも理解できますが、約5万店もの出店者が支える独自の経済圏だからこそ、彼らの犠牲の上に成り立つ成長は長続きしないのではないでしょうか。ネット通販の魅力は、多様な店舗が集まる楽しさにあるはずです。
政府側でも、巨大IT企業の契約変更に透明性を求める新しい法案の整備が進められています。時代の変化に対応することは不可欠ですが、独裁的なルール変更ではなく、現場の声に耳を傾ける姿勢こそが今もっとも求められています。お互いが納得できる持続可能なビジネスモデルを構築できるかどうかが、今後の楽天市場の命運を握るでしょう。
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