私たちの生活に最も身近な存在である食品スーパーの経営に、今までにない異変が起きています。全国スーパーマーケット協会などの業界3団体が発表した2019年の全店売上高は、前年比0.1%減の10兆7880億円となりました。実は、この調査が2011年に始まって以来、年間売上高が前年を割り込むのは今回が初めての事態です。常に安定した需要があると思われていた食のインフラですが、時代の荒波に揉まれていることが浮き彫りになりました。
ネット上でもこのニュースは大きな話題を集めています。SNSでは「確かに最近、特売の回数が減った気がする」「増税後に買い物を控えるようになった」といった、消費者のリアルな生活実態を反映した声が続々と上がっている状況です。単なる数字の減少にとどまらず、多くの人々が景気の冷え込みを肌で感じている様子がうかがえます。では、なぜこれほどまでに業績が落ち込んでしまったのでしょうか。その背景には、複数の深刻な要因が複雑に絡み合っています。
最も大きな打撃となったのが、2019年10月1日の消費税率引き上げにともなう消費の冷え込みです。今回は日々の食料品などの税率を8%に据え置く「軽減税率(けいげんぜいりつ)」が導入されましたが、10%に引き上げられた酒類などを中心に露骨な買い控えが発生しました。政府によるキャッシュレス決済のポイント還元施策も実施されていますが、増税前の駆け込み需要の反動による落ち込みを補うほどの爆発力は、残念ながら発揮されていないのが現状です。
異常気象の猛威とカレンダーの不運がもたらした経営への大打撃
さらに追い打ちをかけたのが、地球温暖化の影響を感じさせる記録的な異常気象でした。夏は記録的な冷夏となり、冬は雪が降らない暖冬傾向が続いたため、夏場の冷たい飲料や冬の定番である鍋物セットといった「季節性商材(きせつせいしょうざい)」の売れ行きが激しく低迷したのです。追い打ちをかけるように、2019年10月には大型台風が首都圏を直撃し、多くの店舗が安全確保のために計画休業を余儀なくされたことも、売り上げ減少に拍車をかけました。
加えて、2019年はカレンダーの巡り合わせにも恵まれませんでした。5月の改元にともなって12月23日が祝日ではなくなった影響で、スーパーにとって年間最大のかき入れ時であるクリスマス商戦が平日のど真ん中になってしまったのです。平日の夜は惣菜などの需要こそ見込めますが、家族でごちそうを囲むような大型の買い物には繋がりにくく、このイベント時期のズレも食品スーパーにとっては手痛いマイナス要因として作用することになりました。
今回の統計データは、主要な大手チェーンを除いた地域密着型の中小スーパーの動向が色濃く反映されています。これは、私たちの街にある身近なお店ほど、増税や天候のダメージをダイレクトに受けている証拠だと言えるでしょう。私は、今こそスーパー各社が安売り競争から脱却し、独自の魅力や利便性を打ち出すべきだと考えます。消費者の財布の紐が固い今だからこそ、地域に愛される新しい店舗作りの工夫が求められているのではないでしょうか。
コメント