山形県飯豊町で進められていた一大プロジェクトに、突如として激震が走りました。山形大学の小山清人学長が、次世代電池の研究拠点である「山形大学xEV飯豊研究センター」の閉鎖を検討していることが明らかになったのです。2016年に開設された同センターは、町や山形銀行と連携して関連産業を集める「地方創生」の星として大きな注目を集めていただけに、関係者の間では驚きと困惑が広がっています。
飯豊町の後藤幸平町長が学長からこの意向を告げられたのは、2019年12月の年末のあいさつの席でした。2020年3月末にも閉鎖したいという突然の打診に、町長は「連携の一角が崩れ、事業に大きな影響が及ぶ」と猛反発し、継続を強く求めています。町が7億円を投じて建物を建設し、大学側も国の補助金をもとに8億円をかけて最新の衝突実験装置などを揃えた施設なだけに、簡単には引き下がれないのが実情でしょう。
異例の地価上昇も記録した「電池バレー構想」への打撃
このプロジェクトは、人口約7000人の小さな町に大きな経済効果をもたらしていました。地域一帯に産業を集積させる「電池バレー構想」が掲げられ、周辺にはホテルが建設されるなど、地方の町としては異例の地価上昇も起きていたのです。センター内には研究用に分解された電気自動車(EV)が約25台も並び、次世代モビリティ社会の到来に向けた熱気にあふれています。
さらに、センターの隣接地には自動車整備学校を運営する赤門学院が、EV関連の専門職大学の開設を2019年秋に文部科学省へ申請したばかりです。専門職大学とは、実践的な職業教育に特化した新しい形態の大学を指します。また、町が建設した貸工場では、電池の正極と負極を分離してショートを防ぐ基幹部品「セパレーター」の生産も計画されており、山形銀行が出資する総額50億円もの巨大事業が動き出しています。
この工場はすでに着工しており、2020年内には完成する予定となっています。山形銀行も、全国初となる全額出資の地域商社を設立し、生産された部材を自ら販売するという地銀の新たなビジネスモデルを2019年12月に発表したばかりでした。まさにこれからというタイミングでのハシゴ外しに、銀行幹部からも「何が起こっているのか分からない」と頭を抱える声が漏れてきます。
なぜ今?閉鎖検討の裏にある大学側の事情とSNSの反応
小山学長が閉鎖を検討する背景には、特定の研究者に依存しすぎているという大学特有の事情があるようです。現在、このセンターは企業出身の教授がたった1人で切り盛りしています。学長は大学のブランド力向上を目指していますが、センターからの情報発信はほとんどありません。24時間体制で研究に没頭する熱心な教授ゆえに、周囲との摩擦が生じて学内から反発の声が上がっていたのも事実です。
ネット上やSNSでもこのニュースは敏感に捉えられており、「地方創生の理想的なモデルだと思っていたのにショック」「研究者個人の熱量に頼りすぎる組織の脆さが出た」「最先端のEV研究拠点がなくなるのは日本の損失では」といった、事業の存続を心配する声が多数寄せられています。一方で、「大学側の負担や持続可能性を考えれば、一度立ち止まるのも英断かもしれない」という冷静な意見も見られました。
2020年3月末に任期満了を迎える小山学長にとって、今回の提起は未来に向けた問題提起なのでしょう。工学部の教授陣からも「立ち止まって考える良いタイミング」と一定の理解を示す声が出ています。しかし、激変する先端産業へ命運を賭けた飯豊町にとっては死活問題です。課題があるならば、一人の教授に背負わせるのではなく、大学を挙げて組織的に支援する体制を整えることこそが、真の地域貢献ではないでしょうか。
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