暖冬に負けない!気候変動をチャンスに変える「気温軸経営」と企業の最新戦略

最近は冬になっても厳しい寒さを感じることが減り、過ごしやすい日が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、この「暖冬」という気候の変化は、私たちの生活に密着したビジネスに思いのほか深刻な影を落としています。雪不足によって各地のスキー場や観光地が大きな打撃を受けているほか、冬物衣料の売れ行きにもブレーキがかかっているのです。ネット上でも「お気に入りのコートを着る機会がない」「スキー場に雪がなくて悲しい」といった、戸惑いの声が数多く寄せられています。

誰もが知るカジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも、この異変に直面している企業のひとつです。同社が発表した2019年9月から2019年11月までの連結決算では、残念ながら売上と利益がともに減少する結果となりました。さらに2020年1月には、同年8月期における通期の業績予想を下方修正すると発表したのです。このような期中の見直しは同社にとって4年ぶりの事態であり、暖冬がいかにビジネスの計算を狂わせているかが浮き彫りになりました。

もちろん、業績に影響を与えたのは天候だけではありません。韓国で発生している不買運動といった政治的なリスクも重なっています。しかし、それ以上に同社にとって大きな痛手となったのが、売上全体の大部分を占める主力商品である冬物衣料の苦戦でした。実は、その前のシーズンも暖冬による冬物の不振に悩まされており、2年連続で同じ課題に直面している形です。地球温暖化がビジネスに与える影響は、私たちが想像する以上に切実な問題と言えるでしょう。

近年の日本を振り返ると、過去に例を見ないほどの巨大な台風の上陸や、毎年のように記録を更新する猛暑など、極端な気象現象が目立ちます。2019年に公開されて大ヒットを記録したアニメーション映画『天気の子』では、異常気象が当たり前になった世界が描かれて議論を呼びました。SNS上でも「映画の世界が現実味を帯びてきた」とリアルな恐怖を語る人が増えています。もはやこれまでの「春・夏・秋・冬」という決まった季節のパターンを前提にした経営は、通用しなくなっているのです。

こうした状況に対して、ファーストリテイリングの岡崎健取締役は決算の記者会見の席で、顧客が今まさに求めているものを的確に作り届ける重要性を強調しました。それと同時に、これからは気候の急激な変化に対して柔軟に対応していく姿勢が不可欠であるとも語っています。ビジネスにおいて予期せぬトラブルは付きものですが、これからは「異常気象が日常になる」という厳しい現実をあらかじめ覚悟した、攻めの姿勢がすべての企業に求められているのではないでしょうか。

私は、これからの時代を生き抜くためには、これまでの「季節」という固定観念を捨てるべきだと考えます。天候のせいで売れなかったと言い訳を並べても、倉庫に残った在庫の山が消えるわけではありません。気候変動によるリスクをあらかじめ経営戦略に組み込み、それをどうやって売上に変えていくかという前向きな方向転換こそが、今まさに求められているはずです。実際に、ピンチをチャンスに変えようと、すでに動き出している先進的な企業がいくつも存在します。

例えば、大手流通グループのセブン&アイ・ホールディングスは、従来の春夏秋冬という4つの季節区分を廃止しました。同社は新しく5月から9月までの長期間を「夏商戦」と位置づけ、店舗の品揃えをガラリと変える工夫を始めています。特に厳しい暑さが予想される日には、家庭で火を使わずに食べられる調理済み食品のラインナップを強化しているのです。さらに、異常気象で食材が不足する事態に備え、仕入れルートを複数に増やす「リスク分散」にも取り組んでいます。

アパレル大手のストライプインターナショナルでも、独自のユニークな戦略が始まりました。同社は夏物衣料の販売期間を、これまでの基準よりも45日間も長く設定することを決めたのです。同社の石川康晴社長は、「これからはカレンダーの季節に合わせるのではなく、実際の気温の変化に合わせた『気温軸の経営』が何よりも重要になる」と語っています。このように、目の前の気温に機敏に反応するシステムを作ることこそが、現代の商戦を勝ち抜く鍵となります。

こうした意識改革の波は、大きな打撃を受けている冬の観光地にも広がっているようです。スキー場で有名な長野県白馬村では、雪が降らないことをただ嘆くのではなく、逆にグリーンシーズンと呼ばれる夏の観光ビジネスの強化に力を注ぎ始めています。冬だけに依存しない長期的な戦略を立てることで、年間を通じて安定した顧客を獲得する狙いでしょう。変化を恐れず、時代の波を捉えて進化を続ける企業や地域こそが、未来の市場で強い輝きを放つに違いありません。

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