お隣の国・韓国では、文在寅(ムン・ジェイン)政権の命運を分ける一大決戦、総選挙が3カ月後に迫り、政治の舞台が激しく揺れ動いています。2020年4月15日に投開票を迎えるこの選挙は、任期を2年余り残した政権の中間評価という意味合いを持つ極めて重要な局面です。SNS上でも「今後の日韓関係にも直結する」「韓国の政治地図がどう塗り替わるか目が離せない」といった声が溢れ、日本国内からも熱い視線が注がれています。
定員300議席の過半数獲得を目指す革新系の与党「共に民主党」は、現在129議席に留まっており、単独では法案を通せない厳しい状況に置かれています。というのも、韓国議会には過半数ではなく「6割の賛成」がなければ法案を上程すらできない、いわゆる「ファストトラック(迅速処理案件)」のルールが存在するからです。これまで中道勢力への根回しに苦心してきた与党は、今回の選挙で圧倒的な主導権を握るべく、驚きの大胆な戦略に打って出ました。
大統領を護衛する「文チルドレン」70人が政界へ殴り込み
その戦略こそが、文在寅大統領の信望が厚い側近たちを大量に政界へ送り込む「文チルドレン」の擁立です。2020年1月に入り、大統領の最側近とされる尹建永(ユン・ゴンヨン)国政企画状況室長が「大統領の護衛者になる」と熱く宣言して辞表を提出しました。さらに2020年1月15日には、抜群の発信力を誇る元KBSアナウンサーの高旼廷(コ・ミンジョン)報道官も電撃辞任し、激戦区からの出馬に向けて動き出しています。
韓国メディアの報道によると、2017年の政権発足以降に大統領府で苦楽を共にした秘書官や報道官ら、およそ70人ものエリートたちが政界進出を狙っているとのことです。彼らは今後、党内の予備選を経て各選挙区へ配置される予定となっています。現在も40%台後半という底堅い大統領支持率を背景に、支持層の厚い首都圏を中心に「検察改革」などの実績をアピールすれば、勝利を引き寄せられると与党は踏んでいるようです。
この大量擁立には、文在寅大統領による党内統治の強化という、もう一つの裏の狙いも透けて見えます。韓国の大統領制は「1期5年」の再選禁止規定があるため、選挙後はどうしても2022年の次期大統領選に関心が移り、現職の求心力が低下する「レームダック(死に体)現象」が懸念されるものです。しかし、大統領に絶対の忠誠を誓うチルドレンが議会に大量に存在すれば、任期終盤まで影響力を維持できるでしょう。
分裂の代償と新選挙法の罠!追い詰められる保守系野党の苦悩
これに対して、最大野党の「自由韓国党」をはじめとする保守系勢力は、今まさに絶体絶命のピンチに瀕しています。彼らにとって大きな足枷となっているのが、2019年12月末に与党主導で成立した「改正選挙法」の存在です。これは小選挙区で落選した候補への死票を減らすため、比例代表の議席配分を中小政党に手厚くする仕組み(準連動型比例代表制)であり、大政党である自由韓国党にとっては議席を減らしかねない大逆風となります。
さらに保守勢力を苦しめているのが、過去の遺恨による「深い分裂」から抜け出せないという構造的な問題です。朴槿恵(パク・クネ)前政権の弾劾騒動の際、弾劾に賛成した造反組が離党して現在の「新しい保守党」を結成した経緯があり、双方の間に生まれたわだかまりは今も解けていません。自由韓国党の黄教安(ファン・ギョアン)代表は、ようやく保守統合への対話を始めたものの、いまだに全体を牽引する強力なリーダーは不在のままです。
こうした中、2017年の大統領選にも出馬した知名度の高い安哲秀(アン・チョルス)氏が、海外生活を終えて2020年1月19日に帰国し、中道新党の結成を宣言しました。保守勢力は、小選挙区で与党と互角に戦うために「一対一」の構図を作りたいところですが、足並みが揃わない現状では政権を脅かすには至っていません。このまま与党が圧勝すれば、日韓の外交や経済にも強気な姿勢が続く可能性が高く、日本のビジネスパーソンもこの行方に最大限の警戒を払うべきです。
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