現代のビジネス界において、企業が持続していくためには地球規模の課題から目を背けることはできません。気候変動や人権問題といった重いテーマに対し、真摯に向き合う姿勢が今まさに試されています。かつてのような利益至上主義だけでは、これからの社会を生き抜くことは困難でしょう。未来の世代が安心して暮らせる世界を作るために、自らが進んで貢献する立場へとシフトすることが大切です。こうした変化をピンチではなく、自社の新しい成長のチャンスと捉える前向きな戦略が、これからの経営者には求められています。
そのための明確な道標となるのが、国連が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」です。これは2030年までの達成を目指し、地球温暖化の防止や貧困の撲滅、持続可能な生産と消費のバランスなど、17の大きなゴールと169の具体的な目標で構成されています。世界中で分断や対立が表面化する中にあっても、この目標には地球全体で共有すべき危機意識が底流しているのです。先日スイスで開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)でも、環境問題や格差是正といった持続可能性に関する議論が中心となりました。
SNS上でもこの動きは注目されており、「社会貢献をしない会社の商品は買いたくない」「これからの就職活動ではSDGsへの取り組みを重視する」といった声が若い世代を中心に急増しています。つまり、生活者は単にモノを買うだけでなく、その企業の姿勢や価値観に共感して消費行動を起こす時代に突入しているのです。経営において最も重要なのは、理想とする未来の姿から逆算し、今やるべきアクションを決定して迅速に動くことだと言えます。実際に、調達先も含めて温室効果ガスの削減に乗り出す日本企業も現れ始めました。
しかし、欧米の先進企業はさらにその先を走っています。例えば、日用品大手のユニリーバは、すべての事業活動を環境や社会の課題解決に直結させる方針を打ち出しました。海外では児童労働に関わったブランドに対する不買運動が起きるなど、不誠実な企業への視線は一段と厳しくなっています。素晴らしい理念を持たない会社には、優秀な人材も集まらなくなるでしょう。それは結果として、未来の市場から退場を迫られることと同義ではないでしょうか。SDGsを単なるコストや慈善活動と捉えるのは、大きな誤りです。
米国のパタゴニアのように、環境に配慮した製品作りで熱狂的なファンを獲得している事例もあります。つまり、社会課題の解決そのものが強力なビジネスモデルになり得るのです。さらに、金融市場からの要請も見逃せません。近年は、財務情報だけでなく環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を重視する「ESG投資」が世界的な潮流となっています。2018年にはその投資規模が世界で3400兆円に達し、わずか2年で3割も拡大しました。企業評価の基準は完全に変わったと言えます。
ここで専門用語を整理すると、SDGsが「目指すべき国際的なゴール」であるのに対し、ESGは「その目標を達成するために企業が配慮すべき3つの要素」を指します。投資家は、この3つの観点が欠けている企業をリスクが高いと見なすようになっているのです。私個人の意見としても、この変化は一過性のブームではなく、資本主義の健全なアップデートだと確信しています。環境を破壊しながら得た利益に、もはや価値はありません。社会に貢献することと利益を上げることは、これからの時代、完全に両立させるべきものです。
いまから10年後の未来には、ミレニアル世代と呼ばれるデジタルネイティブな若者たちが経済や社会の中核を担うことになります。彼らは幼少期から環境問題を身近に感じて育っているため、企業の社会的責任に対して非常に敏感です。バイオ企業のユーグレナが2019年秋に、高校生を「チーフ・フューチャー・オフィサー(最高未来責任者)」として経営陣に迎えた試みは、まさに象徴的な出来事でしょう。将来の主役となる世代の新鮮な感性やリアルな意見を、今から経営に反映させる姿勢は極めて賢明です。
米国のマイクロソフトも、環境対策に向けて現在は「行動を起こす10年」であると宣言しています。これまでの延長線上にはない革新的なアイデアやイノベーションによって、社会の難題をクリアしようと挑戦する企業こそが、次の時代を牽引していくに違いありません。目先の利益を追うだけの経営から脱却し、未来に選ばれる存在になるための変革を、今すぐスタートさせようではありませんか。
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