政府の地震調査委員会は2020年1月29日、南海トラフ巨大地震に伴う津波の発生確率を初めて公表いたしました。津波の高さに応じて、今後30年以内に襲う確率を3段階の数値で示しています。驚くべきことに、木造家屋が全壊するとされる3メートル以上の津波に襲われる確率が「26パーセント以上」と判定された自治体は、なんと70以上に達しました。この衝撃的なデータに対し、SNS上では「自分の地域が安全なのか不安になる」「確率の計算方法がよく分からない」といった困惑の声が数多く上がっています。
今回の発表では、地震や津波という予測が極めて難しい自然災害のリスクを確率で可視化しようと試みています。しかし、発表された数字の受け止め方には大きなバラつきが生じる懸念が拭えません。例えば、南海トラフ地震そのものが30年以内に発生する確率は「70から80パーセント」とされているため、今回の津波確率を見ると、全体的にかなり低い印象を抱いてしまう方が多いのではないでしょうか。ここに、防災情報を発信する難しさが潜んでいると感じます。
専門組織である地震調査委員会は、今回の3段階の確率について、低い方から「注意がいる」「リスクが高い」「リスクが非常に高い」と定義しています。ですが、一般の感覚からすれば、一番低い「6パーセント未満」という数字を提示されても、それがどれほどの危機なのか実感が湧きにくいのは当然です。数字が低い地域の人々が「ここは大丈夫だ」と津波リスクを過小評価してしまうことは、最も避けるべき事態だと言えます。
そもそも津波というのは、わずか1メートル級であっても人間を簡単に押し流し、命を奪うほどの凄まじい破壊力を持っています。これは、私たちが2011年の東日本大震災から学んだ極めて重い教訓にほかなりません。確率が数パーセントだからといって、決して油断していい理由にはならないのです。不確実な数値に一喜一憂するのではなく、常に最悪の事態を想定して行動を起こす意識こそが、私たちの命を救う鍵になるでしょう。
過去の最大想定とのギャップに戸惑う現場と今後のアプローチ
国の中央防災会議は、2012年に南海トラフにおける最大級の津波想定を公表しており、高知県黒潮町で最大34メートルに達すると予測しました。各自治体はこの甚大な被害を前提に避難計画を構築してきた経緯があります。ところが、今回の発表ではあえてその「最大級」のケースが除外されました。異なる視点からリスクを伝える狙いがあったようですが、前線で防災に取り組む自治体や住民の間に大きな戸惑いが広がるのは無理もありません。
科学的な観測や分析を担う地震調査委員会と、具体的な被害想定や対策を策定する中央防災会議。この二つの組織がバラバラに情報を発信していては、現場が混乱するばかりです。政府はこれらのデータをしっかりと統合し、分かりやすい防災指針として地域社会へ還元する責任があります。津波から生き延びるための鉄則は、数値の大小に惑わされることなく、揺れを感じたら一刻も早く浸水域から避難することに尽きるでしょう。
コメント