アジアの経済を牽引する台湾の株式市場に、激震が走りました。春節の大型連休が明けた2020年01月30日、市場の指標である加権指数が取引開始直後から大幅に値下がりし、一時前営業日と比べて5%も急落する事態となったのです。この大暴落の背景にあるのは、中国から感染が拡大している新型コロナウイルスに他なりません。世界中のハイテク産業を支える台湾のIT企業群ですが、その業績が大きく落ち込むのではないかという不安が、投資家の間で一気に広がっています。
特に深刻なダメージを受けているのが、電子機器の受託製造サービスを行っている「EMS」と呼ばれる業界の大手企業たちです。EMSとは、自社ブランドを持たずに他社から委託されたスマートフォンの組み立てなどを専門に引き受けるビジネスモデルを指します。今回の株価暴落では、この代表格である鴻海(ホンハイ)精密工業の株価が、一時は日本のストップ安に相当する制限値幅の下限である9.9%安まで売り込まれました。この衝撃的なニュースは、市場関係者だけでなく世界中に大きな動揺を与えています。
さらに、同業大手の和碩聯合科技(ペガトロン)も一時6%を超える大幅な下落を記録しました。これらの企業は、地価や人件費の安い中国国内に巨大な生産拠点を構え、そこから世界市場に向けてスマートフォンやパソコンを出荷する構造を作り上げています。そのため、新型肺炎の感染拡大によって中国の工場が稼働停止に追い込まれれば、世界のサプライチェーンが完全に麻痺しかねません。こうした目に見えるリスクが、売り注文へと繋がっているのです。
影響は組み立て企業だけに留まらず、世界最強の半導体製造メーカーである台湾積体電路製造(TSMC)の株価も、一時3%安まで連れ安する展開となりました。TSMCは、最先端の電子機器の頭脳となる「半導体」を自社で設計せずに製造だけを受託する、世界最大手の企業です。同社は中国の南京市に大規模な工場を保有しており、中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)などを主要な取引先に持っているため、今回の新型肺炎による需要減退への懸念が直撃した格好と言えます。
今回の事態に対し、SNS上では「iPhoneの新作の発売が遅れるのではないか」「中国依存のサプライチェーンが持つリスクが浮き彫りになった」といった不安の声が相次いでいます。私たちはこれまで、安価で効率的なグローバル生産の恩恵を受けてきましたが、それはひとたび感染症などの有事が起きれば、瞬時に崩壊しかねない危うさと表裏一体だったのです。一刻も早いウイルスの終息を願うとともに、今後はリスクを分散させた新しいものづくりの体制へのシフトが必要不可欠になるでしょう。
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