世界のガジェットファンを驚かせるビッグニュースが飛び込んできました。AppleのiPhone製造を請け負うことで知られる、電子機器受託製造サービス(EMS)世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が、欧米の自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とタッグを組みます。両社は2020年1月16日の夜、中国に電気自動車(EV)の開発・製造を行う合弁会社を設立することで合意したと発表しました。スマホ一本足の成長モデルから脱却を図る、同社の本気が垣間見えます。
今回の発表を受けて、SNS上では「ついにiPhoneの製造技術が車に載るのか」「受託のプロがEVを作ると勢力図が激変しそう」といった期待の声が続々と上がっています。一方で「畑違いの自動車産業でどこまで通用するのか」という慎重な意見もあり、ネット上はまるでお祭り騒ぎのような盛り上がりを見せています。投資家の間でもこの異色とも言えるスピード感あふれる協業に対して、今後のEV市場の勢力図を大きく塗り替える可能性があるとして、非常に高い関心が集まっている状況です。
出資比率はFCAが50%を占め、鴻海は4割を超えない見込みとなっており、2020年3月末までの正式契約を目指して細部を詰めていく模様です。ここで注目したいのが、鴻海が掲げる「コネクテッドカー」の導入という戦略でしょう。これは、インターネットへの常時接続機能を備えた自動車のことで、走るスマホのような次世代の乗り物を指します。彼らが長年のスマホやサーバー製造で蓄積した高度なデジタルノウハウが、最先端のEV開発にどのように投入されるのか目が離せません。
岐路に立つ受託製造の王者が描く未来のモビリティ戦略
巨万の富を築いた鴻海ですが、実は大きな岐路に立たされています。中国の巨大工場でiPhoneなどを大量生産するモデルにより、年間売上高19兆円規模という怪物企業へ成長したものの、2016年以降はスマホ市場の飽和や激しい価格競争という逆風に晒されてきました。2018年12月期の連結純利益は、前の期と比べて7%減の1290億台湾ドル(約4700億円)へ落ち込んでおり、新たな収益の柱を見つけることが会社存続をかけた急務の課題だったのです。
一方、パートナーとなるFCAも攻めの姿勢を崩していません。同社は2019年12月にフランスの自動車大手グループPSAとの対等合併に合意したばかりであり、規模の経済を活かしてEVシフトを加速させています。今回の鴻海との連携は、その世界戦略をさらに盤石にするための布石と言えるでしょう。まずは巨大な中国市場を開拓し、将来的には世界へ輸出する計画も視野に入れているとのことで、既存の自動車メーカーにとっては最大の脅威になるはずです。
筆者は、この提携が自動車産業の「水平分業化」を決定づける歴史的な転換点になると確信しています。これまでの自社で全てを抱え込む垂直統合型の車作りから、IT企業が頭脳を、製造のプロがハードを担う時代へ移り変わる予兆です。鴻海が培った圧倒的なスピード感とコスト競争力が自動車の世界に持ち込まれれば、EVの普及は私たちの想像以上の速さで進むでしょう。異業種の壁を越えたこの挑戦が、未来の移動体験をどう変えるのか、非常にワクワクしています。
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