1970年ごろから始まった日本の外食産業化は、経済の波に乗りながら急速な拡大を遂げてきました。1997年には市場規模が29兆円に達し、まさに黄金期を迎えたのです。しかし、少子高齢化による人口減少や長引く消費者の低価格志向に阻まれ、現在の市場規模は25兆円前後と、厳しい足踏み状態が続いています。
この閉塞感を生み出した大きな要因として、2000年代に過熱した「デフレ」が挙げられます。デフレとは、物価が継続的に下がり、お金の価値が相対的に上がる現象のことです。当時、ハンバーガーや牛丼の激しい値下げ競争が繰り広げられたことを、記憶している方も多いのではないでしょうか。
企業は低価格を維持するために業務の効率化を急ぎましたが、その結果として「ワンオペ」などの過酷な労働環境が社会問題化しました。ワンオペとは、深夜などの時間帯に店舗の全業務を1人の従業員にこなさせる過酷な勤務形態のことであり、企業の姿勢に対してSNS上でも批判の声が殺到したのです。
人件費などのコスト上昇が進む中、かつてのような勢いで国内の店舗を増やすことは、もはや現実的ではありません。長年のデフレによって消費者の財布の紐は固く、客単価を急激に引き上げることも困難です。国内での利益確保が構造的に難しくなった今、持続的な成長には海外市場への挑戦が不可欠でしょう。
こうした外食大手の積極的な海外展開に対し、SNSでは「日本の美味しい食文化が世界に広がるのは誇らしい」といった期待の声が数多く寄せられています。その一方で、「現地の情勢不安に巻き込まれるのではないか」と、海外特有のリスクを懸念する冷静な意見も目立っているようです。
世界進出の裏に潜む未知なるリスクとこれからの対策
実際に海外へと舵を切った企業の前には、日本国内とは全く性質の異なる地政学的リスクや予測不能な事態が立ちはだかっています。2020年01月30日時点の状況を振り返ると、香港で発生した大規模なデモ活動の煽りを受け、大手牛丼チェーンの吉野家が営業停止に追い込まれる事態が発生しました。
さらに、中国で猛威を振るい始めた新型肺炎の感染拡大によって、人気イタリアンチェーンのサイゼリヤの株価が急落する事象も起きています。このように、現地における政治の混乱や感染症の流行といった不測の事態は、企業の経営基盤を揺るがす深刻な脅威になり得るのです。
私は、外食企業がグローバルに羽ばたくこと自体は非常に好ましい選択だと考えています。縮小する日本市場に留まり続ければ、産業全体の衰退は避けられません。ただし、単に店舗を増やすだけでなく、現地に根ざした強固なリスク管理体制をいち早く構築することが、今まさに求められているはずです。
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