高級食器の代名詞として世界中で愛されているノリタケカンパニーリミテドですが、実は現在、大きな変革のときを迎えています。陶磁器づくりで長年培ってきた高度なセラミック技術を応用し、急速に普及が進む次世代通信規格「5G」や電気自動車(EV)向け電子部品といった最先端分野へ、本格的に舵を切ることが2020年1月30日までに明らかになりました。老舗ブランドが仕掛ける大胆な挑戦に対し、SNS上では「ノリタケの技術力なら納得」「食器のイメージがガラリと変わった」など、驚きと期待が入り混じった好意的な声が数多く寄せられています。
食器事業の採算改善が大きな課題となる中で、同社は砥石(といし)をはじめとする工業用材料に続く、新たな経営の柱を早期に確立しなければなりません。そこで加藤博社長は、新製品開発のスピードを飛躍的に加速させるため、今後3年間の研究開発投資を劇的に増額する方針を打ち出しました。具体的には、2019年3月期の投資実績と比較して1.5倍となる、40億円規模の予算を投入する計画です。この大規模な資金の最適配分によって、時代の変化に対応した革新的なイノベーションの創出を力強く後押ししていく構えです。
開発の第1ステップとして重視されるのが、自社がすでに保有している優れた既存技術を別の分野へ柔軟に応用していくアプローチでしょう。例えば、電気や動力といった外部のエネルギーを一切使わずに、流体の進む力だけで物質を均一にかき混ぜる「スタティックミキサー(静止型混合器)」という画期的な装置があります。これまでは主に化学工場などの工業用途で使われていましたが、現在では味噌やピーナツクリームを製造する食品工場など、私たちの食生活の舞台にも導入が進んでいる状況です。
さらに、数年前に独自開発した「マイクロナノバブル(超微細気泡)発生器」も、非常にユニークな広がりを見せています。これは水の中に直径が1ミリメートルの1000分の1以下という目に見えないほど小さな泡を発生させる技術で、高い洗浄効果が期待できるのが特徴です。同社はこの強みを活かし、大手外食チェーンなどをターゲットに食器洗浄用の画期的なシステムとして積極的な提案を続けています。こうした既存のノウハウを多角的に応用する柔軟な発想こそが、新たな需要を掘り起こす強力な武器になるに違いありません。
そして、今回の経営戦略における最大の転換点と言えるのが、これまでの「自前主義」からの完全な脱却です。加藤社長は、新規事業が市場で成功を収める確率はわずか1パーセント未満という厳しい現実を率直に認めています。その上で、激しい市場競争を勝ち抜くためには、業界の枠組みに全くとらわれることなく、さまざまな外部企業と手を取り合う「オープンイノベーション(協業体制)」が不可欠だと強調されました。
個人的な見解を述べさせていただきますと、このノリタケの変革は、日本の伝統的な製造業が生き残るための非常に理想的なモデルケースだと強く感じます。過去の栄光や独自の開発スタイルに固執せず、他社と連携して量産体制をスピーディーに整える姿勢は、激変する現代のビジネスシーンにおいて極めて賢明な判断ではないでしょうか。伝統の職人技と最先端テクノロジーが融合したとき、どのような新製品が誕生するのか、今後の展開から目が離せません。
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