世界的な緊張が和らぐ中で、為替市場ではある異変が起きています。2020年01月13日に米国が中国の「為替操作国(通貨の価値を不当に操作していると認定された国)」の指定を解除したことで、米中貿易協議の進展への期待から投資家の不安が和らぎ、円を売る動きが活発化しました。しかし、本来なら世界景気の回復に合わせて値上がりしやすいはずのオーストラリア(豪)ドルは、驚くほど上値が重い展開を見せているのです。
2020年01月14日の東京外国為替市場において、豪ドルは対円で1豪ドル=76円前後まで上昇し、2週間ぶりの高値を記録しました。それに対して米ドルは約8カ月ぶりとなる1ドル=110円台の大台に乗せており、比較すると豪ドルの上昇の鈍さは一目瞭然でしょう。SNS上でも「米中リスクが減ったのになぜ上がらないのか」と困惑する声や、「現地の状況を考えれば買いづらい」といった投資家のリアルな嘆きが数多く見られます。
長期化する大規模な森林火災が経済の大きな重荷に
この伸び悩みの背景には、オーストラリア国内で猛威を振るい続けている深刻な森林火災があります。資源国通貨(鉱物や農産物などの資源を多く輸出する国の通貨)の代表格である豪ドルは、普段なら地政学リスクの緩和に敏感に反応して買われる傾向にあります。ところが、今回は長引く火災の被害が都市部にまで拡大しており、観光業や農業への打撃を通じて、国内景気の先行きに暗い影を落としているのが現状です。
専門家からは、モリソン首相による一連の災害対応の遅れが批判の対象になっており、政治的な不安定化を警戒する見解も浮上しています。さらに市場では「失業率がオーストラリア中央銀行の目標に届かないため、さらなる利下げが行われるのではないか」という観測も消えていません。今後の景気見通しについては強気な見方も一部にありますが、利下げによる通貨安の懸念と火災の深刻さが、投資家を一歩踏みとどまらせている要因と言えます。
筆者の視点といたしましては、この森林火災は単なる一時的な災害の枠を超え、豪州経済の構造そのものを揺るがす重大なリスクに発展していると感じます。地球温暖化による異常気象がもたらしたこの悲劇は、今後の投資判断において環境リスクがいかに重要かを物語っているでしょう。世界情勢が好転しても、足元の国難が解決しない限りは、豪ドルがかつてのような力強い上昇トレンドを取り戻すのはまだ先の話になりそうです。
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