吉野家や森永製菓が仕掛ける「サイズマーケティング」とは?超特盛から小盛まで、サイズ変更で眠れる価値を呼び覚ますヒットの法則

「もっとたくさん飲んでみたい」という幼い頃の夢を、誰もが一度は抱いたことがあるのではないでしょうか。かつて人気漫画のネタとして描かれた極端な大容量サイズですが、今まさに私たちの身の回りで、そんな「サイズ変更」をきっかけにした大ヒット現象が次々と巻き起こっています。

その代表格と言えるのが、牛丼チェーンの吉野家が2019年3月に投入した新メニューです。2019年の日経MJヒット商品番付にも選ばれた「超特盛」は、牛肉の量が並盛の2倍という圧倒的なボリューム感で、発売からわずか1ヶ月で100万食を突破する驚異的な記録を打ち立てました。

SNSでも「この圧倒的な肉の量は夢のよう」「お腹いっぱいお肉が食べられて大満足」と、ガッツリ食べたい層から熱狂的な声が上がっています。しかし、実はこのメガヒットの裏側で、もう一つのサイズである「小盛」が密かな快進撃を続けているのをご存知でしょうか。

小盛は並盛の約4分の3という小ぶりなサイズです。当初、ガッツリと食べるイメージが強い吉野家では苦戦するだろうと予想されていました。ところが蓋を開けてみれば、現在では販売数で超特盛を逆転するほどの安定した人気を誇っているのです。

この小盛を支えているのは、女性やシニア層だけではありません。最近では健康意識の高まりから、炭水化物の量をコントロールしたい、いわゆる「糖質制限」を意識するビジネスパーソンからも絶大な支持を集めています。消費者の健康ニーズに見事にマッチしたと言えるでしょう。

こうした「サイズマーケティング」の成功例は、食品業界だけにとどまりません。化粧品大手の資生堂が2018年に発売した「SHISEIDO ピコ」は、従来のネイルや口紅の半分というミニサイズで展開され、若い世代を中心に瞬く間にトレンドとなりました。

サイズマーケティングとは、商品の成分や中身を大きく変えるのではなく、容量や大きさを最適化することで、新たな顧客層を開拓する販売戦略のことです。資生堂は今年もムースタイプのミニ口紅を限定発売する予定で、ミニサイズ需要は定番化しつつあります。

また、森永製菓の「ラムネ」も、この戦略で劇的な復活を遂げた好例です。元々は子供向けの駄菓子として親しまれていましたが、主成分である「ブドウ糖」が仕事や勉強の疲労回復、脳の活性化に効果的であると大人たちの間で話題になりました。

森永製菓は当初、大人向けにウコンを配合したり、おしゃれなスパークリングワイン風のパッケージにしたりと試行錯誤を繰り返しましたが、これらは残念ながらヒットには至りませんでした。良かれと思って機能を付け足す「引き算」のできない開発は、時に失敗を招きます。

そこで同社が2018年3月に踏み切ったのが、「粒の大きさを1.5倍にする」という極めてシンプルな原点回帰でした。パッケージもビジネスパーソンが買いやすいパウチ型にしてコンビニの棚に並べたところ、注文が殺到して一時販売中止になるほどの社会現象となったのです。

ネット上でも「仕事中の集中力が切れたときに大粒ラムネが手放せない」「デスクに置いておきやすい」と、働く大人たちからの絶賛コメントが相次ぎました。余計なアレンジを加えず、サイズを変えるだけで商品の持つ本質的な価値が再発見された見事な事例です。

私は、こうしたサイズ変更によるヒットの本質は、現代人の「わがままなライフスタイルへの寄り添い」にあると考えます。たくさん食べたい日もあれば、健康のために控えたい日もある。そうした細かなニーズにサイズバリエーションで応えることが不可欠なのです。

ホームセンターのカインズが2016年から展開している限定の大容量洗剤も、節約志向の主婦層に刺さり、50%増のペースで売れ続けています。ただ大きく、あるいは小さくすれば良いわけではありません。顧客が求める「ちょうどいい価値」を見極めることが重要です。

もし、いま一つ伸び悩んでいるブランドがあるならば、期間限定で思い切って10倍のサイズにしてみたり、逆に極小サイズにしてみてはいかがでしょうか。サイズという名の魔法をかけることで、これまで眠っていた商品の潜在的な価値が輝き出すかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました