定年を迎えた後も、自分らしく生き生きと働き続けたいと願う方が増えています。ここ数年で、やりがいと無理のないペースを両立させる「ゆる起業」という言葉が、すっかり定着いたしました。「人生100年時代」というフレーズが社会現象になって久しいですが、身の丈に合わせたビジネスを選択肢に入れるシニア世代は今後も増加するでしょう。しかし、実際に一歩を踏み出そうとしても、何から手を付ければ良いのか迷ってしまうのが本音ではないでしょうか。
ネット上でも「定年後の独立に興味はあるけれど、手続きや資金のことが全く見当もつかない」といったリアルな不安の声が数多く見受けられます。そんな起業初心者の方に心からおすすめしたいのが、自治体や民間企業が定期的に開催している起業セミナーへの参加です。本を読んで独学するのも素敵ですが、講座形式であれば、ビジネスの立ち上げに必要な知識を体系的かつ網羅的に学べます。何が分からないのかすら分からない状態から脱出できるでしょう。
セミナーの魅力は、参加者の状況や属性に合わせて選べる手軽さにあります。シニア向けや女性向け、あるいは準備の進み具合に応じた講座が用意されており、参加費も無料から数千円程度と、お財布に優しいものがほとんどです。2020年1月18日には、埼玉県が主催する「シニア起業事例発表会」が開催されました。参加した石川健司さん(仮名)は、長年の業務経験を活かしたコンサルタント業に興味を持ち、最初の一歩として会場へ足を運んだそうです。
一般的な起業セミナーでは、アイデアの形づくりのほか、事業の設計図となる「事業計画書」の作成方法をじっくり学びます。さらに、市場調査(マーケティング)の手法や、ターゲット層へ認知を広げるプロモーション(販促活動)のノウハウ、国や自治体から受けられる公的支援制度の活用法まで解説してくれるのが心強いポイントです。これらを専門家に教わることで、独りよがりではない、現実的で持続可能なビジネスモデルを構築できるでしょう。
セミナーの後半では、3人の先輩シニア起業家による貴重な体験談が披露されました。実は、同業種だけでなく異業種の成功事例や失敗事例を学ぶことこそ、最大の失敗回避ルートになります。最初の顧客を獲得するまでに要した期間や、初期費用にいくら投資したかといった生々しい数字は、教科書には載っていません。先人がつまずいたポイントをあらかじめ把握しておくことで、自分が起業する際のリスクを最小限に抑えることができるはずです。
もし生の声を聞く機会が周囲にない場合は、起業家たちが集う「交流会」へ参加してみるのがベストな選択だといえます。インターネットで地域の名前と合わせて検索すれば、大小様々なイベントが簡単に見つかるでしょう。前述の石川さんも、平日の夜に開催される交流会への参加を決め、会社とは別の個人名刺を早速作成されました。同世代の仲間がどのように奮闘しているのかを肌で感じることは、大きなモチベーションに繋がるに違いありません。
起業の準備期間は、一般的に半年から1年ほど見込んでおくのが標準的です。特にビジネスの内容がまだぼんやりしている場合や、店舗を構えるなどリスクが高い業種に挑む場合は、仕入れ先や販売ルートの確保を含めて念入りな計画が求められます。焦る必要は全くありません。一歩ずつ着実に知識を蓄え、人脈を広げていくプロセスそのものが、これからの人生をより豊かに彩る素晴らしい冒険になるのではないかと、私は強く確信しています。
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