世界を席巻する巨大IT企業への課税を巡り、国際社会が揺れています。自民党の甘利明税制調査会長は2019年09月30日、日本経済新聞のインタビューに応じ、アメリカとフランスの間で激化する「デジタル課税」の対立について、日本が調整役としてリーダーシップを発揮すべきだとの強い意欲を示されました。SNS上でも「GAFAから適正に徴税できるのか」「日本の外交手腕が問われる」と、大きな関心が寄せられています。
そもそも「デジタル課税」とは、物理的な拠点を持たずに国境を越えてサービスを展開するIT企業に対し、その利益が生じている国が適切に課税するための仕組みを指します。現在は工場や支店などの「物理的拠点」がなければ課税できないという古いルールが壁となっており、これが「税逃れ」であるとの批判を招いてきました。経済協力開発機構(OECD)が2020年末までの合意を目指す中、フランスが先行して独自課税を導入したことで、米国との緊張が高まっています。
甘利氏はこのフランス式の「売上高に応じた課税」に対し、現在の国際税体系を根底から壊しかねないと警鐘を鳴らしています。特定の国だけが突っ走るのではなく、途上国も含めた多くの国々が納得できるバランスの取れた案を日本から提言したいと考えていらっしゃるようです。2020年度の税制改正大綱には、党税制調査会としての明確な方針を盛り込む方針であり、国際的なルール作りにおいて日本の存在感を高めるチャンスと言えるでしょう。
「人生100年時代」を見据えた労働市場の改革と企業の体質強化
一方で、国内に目を向けると「人生100年時代」を見据えた抜本的な改革も議論の遡上に載っています。甘利氏は、勤続20年を超えると退職金の所得控除が拡大する現行制度が、結果として労働力の流動化を妨げていると指摘されました。一つの会社に長く留まることを美徳とする時代から、柔軟にキャリアを形成する時代への転換を、税制面から後押ししようという狙いが透けて見えます。これは働く側の意識改革を促す、非常に踏み込んだ議論になるはずです。
また、安倍首相からは消費増税後の景気動向や世界経済の変化を注視するよう指示が出ているとのことです。景気減速の懸念を跳ね返すため、甘利氏は日本企業の体質改善を税制でサポートする姿勢を強調されました。具体的には、企業が抱える内部留保を成長投資へ向かわせるため、M&A(合併・買収)による新規事業への投資に対して、強力な税制優遇措置を検討されています。攻めの経営を促すこの施策は、日本経済の起爆剤として期待されます。
編集部としては、今回の甘利氏の発言は単なる税制の微調整に留まらない、日本の国家戦略としての意思表示だと感じます。巨大IT企業という「新しい権力」にどう立ち向かうのか、そして硬直化した日本の雇用慣行をどう壊していくのか。消費税10%超の議論を封印しつつも、実効性のある成長戦略を税制で描き出せるかどうかが、今後の日本経済の命運を握っていると言っても過言ではありません。2019年後半から2020年にかけての議論から目が離せません。
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