中東の緊迫した情勢が連日のように報じられる中、イランの最高指導者であるハメネイ師が2012年以来、実に8年ぶりとなる金曜礼拝の演説を行いました。今回の演説がこれほど注目を集めているのは、米軍によって暗殺されたソレイマニ司令官の追悼や、米軍基地へのミサイル報復攻撃という歴史的な節目が重なっているからに他なりません。
SNS上でも「中東の緊張感が一気に高まった」「これからの世界情勢はどうなるのか」といった、不安と関心の入り混じった声が数多く飛び交っています。ハメネイ師は演説の中で、米国への報復を「神の手による歴史の転換点だ」と強く主張しました。さらに「米国とは一切の対話を行わない」と言い切り、国民に向けて反米での一致団結を呼びかけています。
しかし現在のイラン国内は、決して一枚岩の状況というわけではありません。2020年1月8日には、イラン軍が民間旅客機を誤って撃墜するという痛ましい事件が発生しました。この悲劇をきっかけに、政府の不手際を非難する抗議デモがテヘランの学生を中心に巻き起こっており、人々の不満は頂点に達しています。
ハメネイ師はこの撃墜事件を「不幸で悲しい出来事」と表現しつつも、デモ参加者に対しては冷ややかな視線を向けています。抗議活動の背後に「イランを弱体化させようと目論む敵の存在がある」と指摘し、間接的にデモを批判しました。国民の怒りを敵対国への警戒感へとすり替え、国内の引き締めを図る狙いが透けて見えます。
国際社会からの風当たりも強まる一方でしょう。これまでイラン核合意(イランが核兵器の開発を制限する代わりに経済制裁を解除する国際約束)を守ろうと奔走してきた英仏独の3カ国までもが、イランの合意逸脱を非難し始めています。孤立を深めるイランですが、ハメネイ師は欧州への不信感を露わにする一方で、米国以外の国とは交渉の余地を残す姿勢を示しました。
ここで、米軍基地へのミサイル攻撃による実際の被害についても触れておきます。イラン側はアメリカ兵に犠牲者が出ないよう慎重に攻撃したとされていましたが、2020年1月16日の米軍発表によると、実際には11人のアメリカ兵が脳振盪の治療を受けていたことが判明しました。これ以上の衝突が起きれば、取り返しのつかない事態に発展しかねません。
筆者の視点としては、ハメネイ師がどれだけ言葉を尽くしても、国民の政治不信を完全に払拭するのは難しいと考えます。今回のデモには著名な文化人やスポーツ選手も賛同しており、単なる物価高への抗議を超えた、体制そのものへの絶望感が根底にあるからです。米国との対話を拒絶し続けるだけでは、混迷を極める中東情勢の平和的な解決は遠のくばかりでしょう。
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