2019年12月19日、フランスのシャルル・ドゴール空港にて。マネーフォワードの取締役であり、Fintech研究所長を務める瀧俊雄氏は、フランス全土を揺るがす大規模なストライキの渦中にいました。エジンバラで開催された金融オープン化の国際会議「FDATA」からの帰路、足止めを食らった氏は、自らのリスク管理を省みると同時に、日本と世界の「働く権利」の在り方に深い思考を巡らせています。
日本ではストライキという光景こそ珍しくなりましたが、それは決して社会への不満が解消されたからではありません。格差の拡大や老後への漠然とした不安、そして不安定な雇用形態といった課題は、今も私たちの足元に山積しています。SNS上でも「日本人は我慢しすぎではないか」という声が散見される中、瀧氏は労働争議という旧来の枠組みを超え、誰もが真に安心を感じられる新しい議論の形が必要だと提言しています。
例えば、勤務時間外に仕事の連絡を遮断する「オフラインになる権利(つながらない権利)」は、現代を生きる私たちにとって極めて重要な要素でしょう。フランスでは既に法制化が進んでいますが、日本では法律で縛るよりも先に、ビジネスチャットツールの通知オフ機能といった「テクノロジーによる解決」が社会的なマナーとして定着し始めています。ルールを作る前に、仕組みで人を守るというアプローチは、非常に日本らしい進化の形と言えるかもしれません。
金融の未来を切り拓く「API」とエコシステムの真価
瀧氏が参加した「FDATA」では、金融機関が持つデータを外部と安全に連携させるための「銀行API」の開放について、熱い議論が交わされました。「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」とは、ソフトウェア同士をつなぐ窓口のような仕組みを指します。これが普及することで、私たちは銀行のアプリを開かなくても、家計簿アプリや決済サービスを通じて、よりシームレスで便利な金融サービスを享受できるようになるのです。
国際会議のパネルディスカッションにおいて、瀧氏は「生活者の役に立っている企業群を定義し、その発展をあらゆる手段でサポートすべきだ」と強く主張しました。金融システムを刷新することは、走行中の高速列車の車輪を交換するような困難を伴う大事業です。しかし、既存の枠組みや政策ありきの考えに固執していては、真の利用者利便は実現できません。常に「ユーザーにとって何が最善か」という視点を失わないことが、変革の起点となります。
マネーフォワードという企業もまた、多くの公的サポートを受けながら、生活者の利便性を追求し続けてきました。私は、瀧氏の「方法論にこだわらず、柔軟に課題解決を目指す」という姿勢に強く共感します。前例のない少子高齢化や社会構造の変化に直面する今、私たちに必要なのは、正解のない問いに対して対話を止めず、テクノロジーと知恵を総動員して新しい社会契約をデザインしていく覚悟なのではないでしょうか。
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