ビジネス界に計り知れない衝撃を与えた巨星が、惜しまれつつも世を去りました。世界的なベストセラー『イノベーションのジレンマ』の著者として知られる、米ハーバード大学経営大学院のクレイトン・クリステンセン教授が、2020年1月23日に67歳という若さで亡くなりました。この訃報に対し、SNS上では「現代ビジネスの教科書を失った」「彼の理論は今も私の指針です」といった、世界中の経営者やビジネスパーソンからの深い哀悼の意と感謝のコメントが次々と寄せられています。
クリステンセン教授が1997年に提唱した「ディスラプション(破壊的イノベーション)」という言葉は、今やIT業界を中心に広く使われています。これは、優れた大企業が顧客の意見に耳を傾け、高品質な製品を追求するあまり、低価格で一見粗悪に見える新技術を持つ新興企業に市場を奪われてしまう現象を指します。皮肉にも「正しい経営」を実践することが、自らの首を絞めるというパラドックスを証明したこの理論は、当時のビジネス界に強烈なパラダイムシフトをもたらしました。
生前、教授は経営トップの果たすべき役割の重要性を熱く説いていらっしゃいました。損失を覚悟してでも未来の革新へ投資を決断し、社内の既存部門からの反発や圧力から新しい芽を守り抜くこと。それこそが、リーダーに課せられた真の使命であると主張されたのです。既存の成功体験に縛られることなく、未知の可能性にリソースを割く決断力こそが、ディスラプションの荒波を生き抜く唯一の武器になるに違いないと私は強く共感いたします。
さらに教授は、現代の産業界が陥っている「金融至上主義」に対しても、鋭い警鐘を鳴らしていました。予想される収益が低いからという理由で投資を渋れば、将来生まれるはずの価値はゼロになり、それは確実な自滅への道を意味します。ハーバードをはじめとする米国の経営大学院が教える、目先の投資収益率や企業価値の算定法を盲信し、乱用する風潮を「米産業界のがんだ」とまで表現したその言葉には、本質的な価値創造を見失うなという強いメッセージが込められています。
最晩年まで研究への情熱を燃やし続けた教授の人生は、壮絶な病魔との闘いの歴史でもありました。1型糖尿病や心臓病、脳梗塞、リンパ腫といった数々の重病を患いながらも、不屈の精神で実務や研究を重ねてこられたのです。2011年9月24日に行われたインタビューの際にも、オレンジジュースで血糖値を必死にコントロールし、脳梗塞の後遺症による言語障害と闘いながら、一言一言の言葉をかみしめるように真摯に語る姿が非常に印象的でした。
2メートルを超える長身を誇り、学生時代はバスケットボール選手としても活躍した教授は、敬虔なモルモン教徒としても有名です。安息日である日曜日には試合出場を断固として拒否したという筋の通ったエピソードからも、彼の誠実な人柄が伺えます。「重病を患うたびに、この世での自分の使命が残っているのかを神に問いかけてきた。もし終わったのなら、喜んで次の世の使命を果たす」と語っていた教授。その気高い魂と偉大な教えは、これからも多くのリーダーたちの心の中に生き続けるでしょう。
コメント