2019年6月27日、日本の国の財政を支える税収が、2018年度に60.5兆円弱に達し、大きな注目を集めています。これはバブル景気の絶頂期である1990年度に記録した従来の過去最高額、60.1兆円を上回る歴史的な数字です。この増収は、それまでの世界経済の好調な流れに大きく支えられた結果だと見られています。景気が上向き、企業や個人が得る利益が増えたことで、国に入る税金も自然と増加したのです。日本の経済規模と活力を示す明るいニュースとして捉えられますが、一方で、この好調が継続するのかについては、今後の経済情勢次第で予断を許さない状況にあると言えるでしょう。
特に今回の税収増加に大きく貢献したのは、所得税です。財務省は、2018年度の第2次補正予算を組む段階では、全体の税収を59.9兆円と見込んでいました。ところが、この見込み額を数千億円も上回る実績が出た背景には、所得税収が補正予算で想定していた額を4,000億円ほども上振れしたことが挙げられます。これは、企業で働く人々の給与が増えたり、個人が株式投資などで得た利益(キャピタルゲインなど)が増加したことを示唆しており、景気回復の実感が個人の懐にも届き始めている証拠とも言えるでしょう。
しかし、全ての税目が順調だったわけではありません。景気の動向を敏感に反映する法人税収は、期待したほどの伸びを見せていないのです。財務省の関係者からも「思ったよりかなり厳しい」という本音が漏れてくるほど、2019年に入ってからの世界経済の不透明感は、日本の企業活動に大きな影を落としています。特に、米中貿易摩擦の影響で中国向けの輸出が冷え込んだことが響き、日本の屋台骨である製造業の法人税収が伸び悩む結果となりました。法人税とは、企業が得た利益に対して課される税金のことで、企業の業績悪化は、即座に国の税収に影響を与える重要な税目です。
税収最高額でも拭えない財政再建への課題と今後の展望
過去最高の税収を達成したものの、国の財政に対する懸念は依然として根強く残っています。政府は2019年度の税収について、さらに増額となる62.5兆円を見込んでいますが、不安要素が山積しているのも事実です。最大の懸念は、世界経済の先行きが不透明であること。米中貿易摩擦だけでなく、地政学的なリスクなど、海外発の景気減速要因が日本の経済成長を妨げる可能性があります。また、2019年10月に予定されている消費増税(消費税率の引き上げ)が、国内景気にどのような影響を及ぼすのかも注視する必要があるでしょう。
さらに、政府は2019年6月21日に閣議決定した経済財政運営の基本方針(通称:骨太の方針)の中で、「機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行する」と明記しています。これは、景気が悪化した場合などに、積極的に公共事業などの歳出(政府の支出)を拡大する可能性を示唆しています。景気下支えのための経済対策は重要ですが、その一方で、国債残高の削減など財政再建(国の借金を減らし健全な財政を取り戻すこと)に向けた道筋は、さらに遠のくのではないかという指摘も少なくありません。歳出圧力が高まる中で、今回の税収最高額が、一過性のものに終わってしまうのか、それとも持続的な財政改善の糸口となるのか、今後の政策運営から目が離せません。
SNS上でも、この報道に対しては「景気が良いのは大企業だけでは?」「過去最高でも、借金が多すぎて焼け石に水だ」といった、厳しい意見が多く見受けられます。国民の関心は、単なる税収額の増加だけでなく、そのお金がどのように使われ、どのようにして国の借金問題が解決されるのかという、財政の健全化に向けられていると言えるでしょう。編集者としての私の見解では、今回の税収増は喜ばしいニュースですが、これを機に財政規律を緩めることなく、増税による景気の落ち込みを防ぐ対策と、将来世代にツケを回さないための財政再建への強い意志が、政府には求められていると考えます。
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