2020年1月31日、日本の金融業界に大きな衝撃を与えるニュースが駆け巡りました。証券業界の巨人である野村ホールディングス傘下の野村証券が、徳島県を地盤とする阿波銀行と包括的に提携することを発表したのです。この提携は、単なる協力関係にとどまりません。野村証券は、山陰合同銀行に続き、阿波銀行の個人向け証券事業を実質的に統合することになります。まさに、厳しい収益環境の中で生き残りをかけた、両者の必死の戦略が見て取れます。
会見の場で、阿波銀行の長岡奨頭取は「預かり資産1兆円」という壮大な目標を掲げました。現在、徳島県内での両社の合計預かり資産は7000億から8000億円にのぼりますが、今回の提携により、さらなる飛躍を目指すとのことです。野村証券の新井聡副社長も、これまで届いていなかった金融サービスを広く提供し、収益基盤となる売上高、いわゆるトップラインを拡大する意欲を見せました。今年2020年の4月から6月をめどに最終契約を締結する予定であり、そのスピード感には驚かされます。
役割分担で挑む、新しい金融サービスの形
今回の提携の肝は、極めて明確な役割分担です。地域密着で顧客との深い信頼関係を持つ阿波銀行が営業の最前線を担い、野村証券は複雑なシステム管理、コンプライアンス(法令順守)の監視、そして質の高い商品供給という「裏方」の専門領域を徹底的に支えます。具体的には、阿波銀行の口座を野村証券に移管し、野村から90名もの精鋭営業社員が出向することで、現場の営業力を強化します。これまでのような各社単独の営業ではなく、補完し合うことで効率を高める戦略です。
なぜ、これほどまでに連携が加速しているのでしょうか。背景には、金融ビジネスを取り巻く環境の激変があります。ネット証券の台頭により、金融商品の取引手数料は低下の一途をたどっています。一方で、顧客が求める相続対策や資産形成のニーズはますます高度化し、コストを抑えつつ専門性を維持することが、どの金融機関にとっても至上命題となっているのです。得意分野に特化することで、この高いハードルを乗り越えようというわけですね。
対照的な「地域型」と「連合型」の戦略
現在、この動きを二分しているのが、野村証券の「地域型」と、SBIホールディングスの「連合型」です。SBIホールディングスは、島根銀行、福島銀行、筑邦銀行などへ相次いで出資し、全国の地銀と幅広くつながる「SBI地銀ホールディングス連合構想」を打ち出しています。北尾吉孝最高経営責任者(CEO)が主導するこの戦略は、フィンテック(金融と技術の融合)サービスを共通化し、各行の質的改善を狙うというものです。まさに、ITの力を武器にした大胆な経営関与といえます。
SNS上では、「地銀の強みを活かしつつ、証券のノウハウを吸収するのは合理的」「生き残りのためには当然の流れ」といったポジティブな声もあれば、「地域の顔が見えなくなるのでは」と懸念する声も散見されます。しかし、私自身は、金融機関がこれまでのような「何でも屋」から脱却し、強みを掛け合わせることで顧客に最適なサービスを届ける体制へ進化することは、必然であり歓迎すべき変化だと捉えています。変化を恐れるよりも、この新しい流れをどう活用していくかが鍵となるでしょう。
コメント