新型肺炎が突きつける経済の危機:市場を震撼させる「ブラックスワン」の正体とは

2020年2月3日、感染拡大が止まらない新型肺炎の影響で、世界の金融市場に動揺が広がっています。前週末の米国株の急落に続き、この日の東京市場でも日経平均株価が一時400円を超える大幅な下落を記録し、心理的な節目である2万3000円を割り込みました。春節の連休明けとなった中国・上海市場では、一時9%もの暴落が見られ、投資家の不安は頂点に達しています。

市場が真に恐れているのは、企業活動や人の移動が停滞することで実体経済そのものが冷え込む事態です。かつて米投資ファンド、カーライル・グループ創業者のデビッド・ルーベンスタイン氏は、金融市場を揺るがす「ブラックスワン」のひとつとして、ウイルスによる世界的な感染症の流行、すなわちパンデミックを挙げていました。「ブラックスワン」とは、めったに起こらないが、発生すると壊滅的な影響をもたらす予測不能な事象を指す経済用語です。

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過去の常識が通用しない未知の衝撃

今回の事態に対し、米ムーディーズ・アナリティクスは、過去の金融危機とは性質が異なると指摘しています。かつてのリーマン・ショックのような金融危機は不動産市場の悪化という予兆がありましたが、今回はウイルスという、誰もが予測できなかった事態です。さらに深刻なのは、金融危機と違って健康問題に直結するため、金利操作などの金融政策だけでは解決できず、打てる政策手段が極めて限定される点でしょう。

米ゴールドマン・サックスは、中国経済への影響は大きいものの、米経済へのダメージは一時的であり、その後は回復すると比較的冷静な見方を示しています。しかし、これはあくまで消費や移動が一定期間内に正常化するという条件付きの予測です。パンデミックの規模と期間が全く見えない現状において、市場が過度な楽観を許さないのは当然のことかもしれません。

市場の動揺と将来への懸念

中国人民銀行は、株価の暴落を食い止めようと1.2兆元(約18.7兆円)という異例の資金供給を発表しました。株価が下落することで、自社株を担保に融資を受けている企業の経営が連鎖的に悪化することを防ぐための必死の対応といえます。SNS上でも、この急激な市場の反応に対し、「リーマン・ショック以上のインパクトになるのではないか」という不安の声や、経済活動の停滞を懸念する投稿が相次いでいます。

今回のケースが2002年から2003年にかけて発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)のときと決定的に異なるのは、経済状況の前提です。SARS当時はITバブル崩壊後の底入れ時期でしたが、現在は米国株を中心に高値更新を続けていた楽観ムードの中でこの衝撃が直撃しました。この「ブラックスワン」は、一時的な市場の混乱にとどまらず、人々の投資マインドや経済の長期的な方向性さえも変えてしまう転換点になるのではないでしょうか。

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