私たちは普段、当たり前のように名前で呼び合いますが、落語家の世界では「本名」と「芸名」が人生を大きく左右します。2020年2月3日現在、第一線で活躍する落語家・春風亭一之輔師匠も、日常生活で本名の「川上隼一(としかず)」と呼ばれる機会はほとんどありません。病院の待合室でふと本名を呼ばれ、思わずドキリとしてしまうことは、人気者ならではの微笑ましい日常と言えるでしょう。
面白いことに、師匠の「隼一」という名前は、これまで一度も初見で正しく読まれることがなかったそうです。ご両親いわく、由来はなんと「特急はやぶさ1号」から。真偽のほどは定かではありませんが、このエピソードを聞いたファンからは、SNS上で「一之輔師匠、名前の由来がユニークすぎる!」「もし本当に特急列車からなら、スピード感あふれる高座のルーツかも?」といった温かい反響が寄せられています。
受け継がれる芸名と、師匠との深い信頼関係
落語家にとっての芸名は、単なる呼び名ではなく、師匠から授けられる大切な誇りです。若き日の師匠が最初に名乗った「朝左久(ちょうさく)」という名前には、実は深い物語がありました。師匠である春風亭一朝師匠が、かつて恩義を受けた名鳴り物師・望月長左久氏の音を拝借し、命名したのです。
「これにしなさい」と半ば強制のような提案をされつつも、師匠のこだわりを知った一之輔師匠は、見事にその意を汲み取り「朝左久」を名乗ることになりました。師匠が笛の名手として歌舞伎座の舞台に立つほどの風流人であることを知ると、この名前がいかに粋な贈り物であったかが伝わってきます。前座時代、鳴り物の腕前が名前に追いつかず苦労したというエピソードも、今となっては微笑ましいご愛嬌ですね。
一之輔の名の下に、新たな歴史が刻まれる
その後、二つ目昇進時に自ら考えた「一之輔」という名は、今や多くのファンに親しまれる代名詞となりました。書家泣かせのバランスの悪さすらも、今では愛嬌の一つかもしれません。さらに2020年2月の中席からは、弟弟子の朝七さんが「朝枝」を襲名し、二つ目に昇進するという嬉しいニュースも控えています。
「枝という字は弱々しい」と師匠の奥様がこぼした過去のエピソードを笑い話に変えつつ、後輩の成長を見守る師匠の姿には、落語界の縦の繋がりと確かな伝統を感じます。名前というものは、単なる個人のラベルではなく、周囲との関わりの中でゆっくりと熟成していくものなのでしょう。あなたの周りにも、名前一つで物語が広がるような素敵な出会いはありますか?
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