ヤマハが挑む楽器の未来!壁に溶け込むピアノが奏でる「音楽のある暮らし」の新しいカタチ

東京・銀座にあるヤマハ銀座店の一角で、多くの通行人が足を止めています。彼らが見つめているのは、壁に飾られた一枚の絵画のような楽器。実はこれ、楽器の内部構造である響棒やハンマー、弦を大胆にデザインへ取り入れた、壁掛け式のピアノ「ピアニッシモ フォルテッシモ」なのです。鍵盤には電子ピアノが組み込まれており、実際に演奏を楽しむことができます。

このユニークな作品を手掛けたのは、ヤマハデザイン研究所の所長を務める川田学さん率いるクリエイティブチームです。2019年4月に開催された世界最大級のデザインイベント「ミラノデザインウイーク」で初披露され、2020年2月5日の現在は東京や大阪での凱旋展が行われています。楽器を単なる道具としてではなく、空間に溶け込み、演奏する人そのものを美しい景色に変えてしまうような、新しい体験型楽器の姿を提示しました。

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「使う」から「遊ぶ」へ、デザインの転換点

川田さんのモノづくりに対する哲学は、「使う(ユーズ)」のではなく「遊ぶ(プレイ)」という視点にあります。彼は、機能が明確で役割が完結してしまう道具とは異なり、楽しむことを目的とした製品には無限の可能性があると語ります。演奏のたびに新しい発見があり、やりたいことが次々と増えていく。そんなふうに目標が絶えず更新され続ける体験こそが、音楽を奏でる喜びの本質なのでしょう。

自身のルーツを振り返ると、幼い頃から物理に親しみ、大学では人間の身体性を活かすプロダクトデザインを学んできたといいます。ヤマハに入社後もスキー板から楽器まで幅広く手掛けてきましたが、大きな転機となったのは英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)への留学です。そこで得た建築やインテリアと調和するデザインの視点が、今の画期的な作品群へと繋がっています。

国境を越え、広がりゆく音楽の風景

SNS上でもこのピアノは大きな注目を集めています。銀座の展示会場で、ある青年が夢中で演奏している姿が印象的でした。声をかけてみると、なんと「SNSでこのピアノの存在を知り、どうしても弾きたくてオーストラリアから飛んできた」とのこと。川田さんの目指した「音楽を楽しむ人を景色として生み出す」というコンセプトは、インターネットを通じて国境を越え、着実に世界中の人々の心に届いているようです。

私自身、楽器は「弾くもの」として隔離された場所に置かれがちだと感じていましたが、壁と一体化させることで、日常の風景に音楽を溶け込ませるという発想には心から感銘を受けました。楽器が主張しすぎず、かといって存在感を消すわけでもない。このようなデザインが増えることで、私たちの生活はもっと音楽的で豊かなものに変わっていくのではないでしょうか。今後のヤマハが提案する新しい空間表現から目が離せません。

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