日本国内で最高級の米として知られる「魚沼産コシヒカリ」。実はこの名称が、新潟県内の複数の自治体にまたがって栽培されるコメを指すことはあまり知られていません。そんな中で、主要産地である南魚沼市が、独自のブランド力を確立しようと、型破りな戦略で奮闘を続けています。2020年1月30日の情報に基づき、この情熱的な取り組みに迫ります。
南魚沼市が仕掛けるユニークな企画の一つが、国際大学と共催する「握飯国際化計画」です。これは世界中から留学生が集まるキャンパスを舞台に、多国籍なアイデアが光る「世界一のおにぎり」を競うコンテストです。2018年から始まり、タイ料理の「ガパオ」を混ぜたものや、セネガルのハイビスカスティーで炊き込んだものなど、これまでになかった独創的なおにぎりが次々と誕生しています。
「どれも塩味がきいていて、主食というよりお酒に合うおつまみの感覚ですね」。試食した南魚沼市農林課の桐生智貴さんも、その新しい味わいに驚きを隠せません。毎回130人以上が来場し、200個のおにぎりが瞬く間に完売するほどの熱狂ぶりです。SNS上でも「斬新すぎて食べてみたい!」「コシヒカリのポテンシャル、凄すぎない?」といった反響が寄せられ、従来の「コメ=和食」という固定観念を覆す試みが大きな注目を集めています。
ブランド維持への危機感と、若手が描く農業の未来
魚沼産コシヒカリというブランドは、日本穀物検定協会が評価する「食味ランキング」で最高評価の「特A」を獲得し続けるエリート米です。しかし、2017年産では一時的に特Aを逃すという衝撃的な出来事もありました。2018年産で無事に最高位に返り咲いたものの、特A獲得数自体が過去最多となるなど、産地間の競争は激化の一途をたどっています。
こうした状況下で、南魚沼市は「南魚沼産」という表示を強調し、他地域との差異化を急いでいます。ブランド価値を高めるためには、単に味を追求するだけでなく、産地そのもののイメージアップが不可欠です。そこで2019年から始動したのが、若手農家たちとタッグを組んだ「農/KNOW THE FUTURE」というプロジェクトです。
特筆すべきは、20台以上のコンバイン(稲刈り機)がV字型の隊列を組んで同時に作業する、まるで映画のような迫力ある動画です。YouTubeで公開されたこの映像は、「農業がこれほどかっこいいとは!」と大きな反響を呼びました。さらに、地元のデザイナーが手掛けた、まるでハリウッド映画のポスターのようなビジュアルを作成。子どもたちに「農業のカッコよさ」を伝え、将来の職業選択のヒントになるよう願いが込められています。
コメの需要減や農家の高齢化など、日本の農業が抱える課題は決して小さくありません。しかし、南魚沼市のこれらの挑戦を見ていると、私は一つの確信を持ちます。それは、伝統を守るだけでなく、柔軟な発想で「楽しさ」を付加する姿勢こそが、産地の未来を切り拓く唯一の道だということです。時代のニーズに合わせて進化し続ける南魚沼のコシヒカリ。その物語は、まだ始まったばかりと言えるでしょう。
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