2020年11月のアメリカ大統領選挙に向けて、現職のトランプ大統領に挑戦する民主党の候補者選びが本格的に幕を開けました。その初戦となる2020年2月3日のアイオワ州党員集会は、集計トラブルにより現場が騒然とする事態に見舞われています。しかし、そのような混乱の渦中にありながらも、驚くべきドラマが現地で展開されました。事前の予想を覆し、38歳の最若手候補と78歳の最高齢候補という、実に対照的な2人がトップを激しく争う展開となったのです。
全米の注目が集まるこの初戦で、有権者が下した決断は非常に興味深いものでした。彼らが求めたのは、単なる過去の実績や政治的な安定感ではありません。激しい分断や怒りを煽り続けるトランプ政権に対抗するために必要なのは、既成概念を打ち破るような「新鮮な期待」や、何があってもブレない「強固な信念」であると有権者は判断したのでしょう。現地で各候補の集会を巡ると、その熱気が肌を通じてダイレクトに伝わってきます。
彗星のごとく現れた若きエリート!「ピート市長」が巻き起こすオバマ氏の再来
まず世界を驚かせたのが、1年前までは全国的な知名度がほとんどなかったピート・ブティジェッジ氏です。彼の行政経験は、人口10万人ほどのインディアナ州サウスベンドという地方都市の市長を8年間務めただけに過ぎません。しかし、その「無名さ」こそが、かえって新鮮な魅力として有権者の目に映っています。彼は卓越した弁舌を武器に、勝利を渇望する民主党員だけでなく、既存の政治に失望した無党派層や共和党の穏健派までもを包み込む戦略を展開しているのです。
この驚異的な躍進は、2008年の大統領選で旋風を巻き起こしたバラク・オバマ氏の姿を彷彿とさせます。ブティジェッジ氏は自身が同性愛者であることを公表しており、性的マイノリティ(社会的少数者)として戦う構図も、黒人初の米大統領を目指したオバマ氏と重なる部分があるでしょう。SNS上でも「若さと聡明さに希望を感じる」「礼儀正しくて自分の息子にしたい理想の人物だ」といった好意的な反響が、特にシニア世代の間で急速に広がっています。
若者を熱狂させる78歳の革命家!信念を貫くサンダース氏の草の根パワー
その対極に位置するのが、徹底した頑固者として知られるバーニー・サンダース氏です。長年にわたり無所属を貫いてきた彼は、格差是正や大学の学費免除、さらには「国民皆保険制度」といった非常に急進的な政策を主張しています。ここでいう国民皆保険制度とは、すべての国民が公的な医療保険に加入し、誰でも平等に医療を受けられるようにする仕組みのことで、自由主義的なアメリカの医療制度を根本から変革しようとする大胆な提案にほかなりません。
おもしろいことに、この78歳のベテラン政治家は、20歳代の若者から絶大な支持を集めています。SNSでは「#Bernie2020」のハッシュタグが溢れかえり、親の世代からずっと主張を変えない彼の誠実さに、多くの若者が信頼を寄せているのです。富裕層や大企業を相手に真っ向から戦いを挑み、人々の怒りを代弁するその姿は、ある種の「左派版トランプ」とも評せるかもしれません。彼もまた、若者との間に強固な「共感」の絆を築き上げています。
大本命の失速と民主党が抱えるジレンマ、待ち受けるトランプ氏の影
この2人が脚光を浴びる一方で、知名度が高く本命視されていたジョー・バイデン前副大統領や、緻密な政策を掲げるエリザベス・ウォーレン上院議員は苦戦を強いられています。バイデン氏の集会は抜群の安定感があるものの、新興勢力のような爆発的な迫力に欠ける印象を拭えません。選挙戦は2020年3月3日の「スーパーチューズデー(多くの州で予備選が一斉に行われる大一番)」に向けてまだまだ続きますが、現在の民主党は大きなジレンマに直面しています。
ブティジェッジ氏の経験不足や、サンダース氏の過激な政策が党内の分断を招くのではないかという懸念は、今後の大きな課題となるでしょう。こうした民主党の混乱を、弾劾裁判で無罪を勝ち取ったトランプ大統領は余裕の表情で見守っています。強大な現職大統領に立ち向かうため、民主党は足元の迷路を抜け出し、一丸となって戦える「勝ち馬」を早期に見出すことができるのか。緊迫の選挙戦から、一刻も目が離せません。
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