東芝・車谷暢昭CEOが語るリーダー論!東大で学んだ哲学と「答えなき難題」に挑む自立心の源泉とは

激動のビジネス界を生き抜くリーダーたちは、いかにしてその強固なメンタリティを築き上げたのでしょうか。東芝のトップとして改革を牽引する車谷暢昭(くるまたに・のぶあき)会長兼最高経営責任者(CEO)の歩みを紐解くと、その原点は10代の学生時代にありました。ネット上でも「異色の経歴を持つリーダーの哲学に痺れる」「型にはまらない生き方が格好いい」と、その独自の経営観に大きな注目が集まっています。

大阪府立茨木高校を卒業した車谷氏は、1976年4月に東京大学へ入学しました。経済学部で財政金融論という専門的な学問を修める傍ら、同氏は自らの興味が赴くままに学問へ熱中していきます。デカルトやカント、マックス・ウェーバーといった偉大な思想家たちの著書を仲間と言い合う輪読会を企画し、徹底的な議論を重ねました。この若い時期に哲学や思想へ深くコミットした経験が、その後の人生を決定づけることになります。

車谷氏は、あらかじめ結論が決まっているような「予定調和」の動きを好まないと公言しています。むしろ、教科書に答えが載っていないような未知の課題に挑む瞬間にこそ、強いやりがいを見出すタイプなのです。なかでも、哲学者であり仏文学者でもある森有正氏の著作『経験と思想』との出会いは、同氏にとってかけがえのない財産となりました。理論や合理性だけに頼るのではなく、自らの足で得た経験や実証を重んじる姿勢がここで培われたのです。

こうした背景から、車谷氏は海外の高名なビジネススクールが提唱する最先端の事業モデルには、あまり関心を示しません。それらは頭の切れるコンサルタントが過去の成功事例を焼き直したに過ぎないと見ているからです。変化が激しく予測困難な「不確実性の高い世界」において、誰かが作った正解をなぞる生き方は選びません。自分の頭で考え抜いたアイデアを頼りに、自らの力で未来を切り拓いていくことこそが本質なのです。

10代の頃に確立されたこの自立した思考は、大学卒業後に三井銀行(現在の三井住友銀行)へ入行してからも揺らぐことはありませんでした。当時の大蔵省へ派遣された際には、国内と切り離して自由な金融取引を行う「オフショア市場」の創設という国家レベルのプロジェクトに従事します。さらに銀行に戻ってからは、住友銀行との大規模な合併や、経営難に陥った三井生命への支援といった数々の難題に最前線で取り組みました。

なかでも同氏の記憶に深く刻まれているのが、東日本大震災の発生後に直面した東京電力の再建案件です。それは単なる企業の経営立て直しにとどまらず、被災された方々への莫大な賠償や、国家の命運を握る電力の安定供給といった複雑な問題が絡み合う極限のミッションでした。誰もが尻込みするような、失敗すれば文字通り「クビ」になるリスクを孕んだ割に合わない仕事でしたが、車谷氏は自らこの重責を引き受けたのです。

猛烈なプレッシャーにさらされる日々のなかで、同氏の支えとなったのは、かつて仕えた三井銀行元社長の小山五郎氏からの「人から必要とされ、望まれることのために動いてこそ価値がある」という至言でした。どんなに厳しい局面でも「必ずこの苦境を切り抜けられる」という確信を持って臨めたのは、若き日に身につけた自立心が原動力になっていたからに相違ありません。この姿勢は、現在の東芝再建にも脈々と受け継がれています。

車谷氏の目から見て、東芝は本来非常にポテンシャルの高い素晴らしい企業です。研究所が誇る技術力は世界トップレベルであり、生み出される製品も極めて優秀だと言えます。現に経営危機が叫ばれたこの3年間においても、主要な顧客をほとんど失っていない事実が、技術や製品に対する市場の深い信頼を証明しています。では、なぜ過去にこれほどの苦境に陥ってしまったのでしょうか。その原因はマネジメント側にありました。

最大の敗因は、時代の変化に合わせて事業の組み合わせを最適化する「事業ポートフォリオの転換」がうまく機能しなかった点にあります。現代のメガトレンドであるデジタル化の潮流を迅速に捉え、既存のビジネスを大胆に入れ替えていく判断が遅れたことこそが、経営悪化の本質的な背景だったのです。だからこそ、東芝が持つ本来の強みやDNAを再確認し、全員がもう一度自信を取り戻して変革に挑む必要があります。

今後の展望として、車谷氏は東芝をデジタル技術の力で再び「世界をリードする一流企業」へと復活させる青写真を描いています。縦割りの組織を打破する事業横断の改革チームを立ち上げ、圧倒的なスピード感を持って構造改革を推進していく構えです。10代の頃に培った自立の精神を出発点として、同氏は新たな挑戦を続けます。「人生100年時代」を迎えた現代において、社会から求められる役割があるならば、現状に甘んじることなく次のステージへ進む姿は、これからのビジネスパーソンにとって大きな刺激となるでしょう。

常に答えのない課題に立ち向かう車谷氏の経営哲学は、これからの時代を生き抜くための大切なヒントに満ち溢れています。現状の延長線上に未来を描くのではなく、自分の頭でゼロから考え、泥臭い経験を積み重ねることの大切さを、同氏の力強い言葉が教えてくれているのではないでしょうか。グローバル市場での競争が加速するなかで、東芝がどのような鮮やかな復活劇を見せてくれるのか、今後の動向から目が離せません。

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