トランプ政権が誕生して以降、アメリカ国民は自らの暮らしをどのように捉えているのでしょうか。イギリスの経済紙であるフィナンシャル・タイムズ(FT)とアメリカの財団が共同で実施した、2020年1月時点の世論調査の結果が公表されました。全米および選挙の行方を左右する「激戦州」のリアルな声からは、数字以上に複雑な国民の心理が浮かび上がっています。SNS上でも「景気の良さを実感できない」「格差が広がっているのではないか」といった、切実な意見が数多く飛び交い、大きな注目を集めています。
まず注目したいのは、大統領就任後の「個人の経済状態」に関する回答です。全米では「とても良くなった」「やや良くなった」を合わせた肯定的な意見が35%に達する一方、「変わらない」が36%、「悪くなった」とする意見も29%を占めました。この結果から、経済の恩恵がすべての国民に均等に行き渡っていない現状が浮き彫りになっています。編集者としての私の視点ですが、株価などのマクロ経済指標が好調であっても、一般庶民の財布が潤うまでにはタイムラグがあるか、あるいは構造的な問題が存在していると言わざるを得ません。
さらに、アメリカ経済における「最大の脅威」として、全体の32%が「医療費の上昇」を挙げた事実は見逃せません。これは、激しい対立が続く中国やメキシコとの「貿易戦争(高い関税を掛け合うことでお互いの経済を圧迫し合うこと)」の18%を大きく上回る数字です。日々生活する人々にとって、国際的な貿易摩擦よりも、病気やケガをした際の自己負担額の増大という身近なリスクの方が、はるかに深刻な問題として捉えられているのでしょう。生活の根幹を揺るがす医療費問題への不安が、世論に重くのしかかっています。
トランプ大統領の経済政策そのものへの評価は、全米で「貢献した」が51%、「悪化させた」が39%となり、肯定的な見方が上回る結果となりました。しかし、大統領選挙で勝利の鍵を握る「激戦州」に目を向けると、「やや悪化させた」という回答が24%に達し、全米平均の20%よりも高くなっています。これは現政権にとって、決して楽観視できない危険信号と言えるでしょう。地場産業への影響や雇用の変化に対して、激戦州の有権者がより敏感に、そして厳しい視線を注いでいることが窺えます。
一方で、国の財政運営に関しては、非常に厳しい世論が突きつけられました。「国家の債務(国が抱える借金のこと)」の管理について、実に62%の人が「誤った方向へ進んでいる」と危機感を募らせています。その影響として、多くの人が「社会保障や医療保険の維持が危うくなる」ことや、「将来の家計収入が損なわれる」ことを心配している状況です。目先の景気拡大と引き換えに、将来へのツケが確実に積み上がっていることに対して、国民が強い不安と不満を感じているのは明らかです。
このような財政赤字が解消されない最大の障害として、有権者は「政治家の指導力や政治的な意志の欠如」、そして「歳出(国が支払うお金のこと)の削減を拒む政治家の姿勢」を厳しく批判しています。ワシントンにおける激しい党派の対立が、必要な改革を阻んでいると国民は見抜いているのです。経済的な繁栄を持続可能なものにするためには、目の前の政策だけでなく、国の骨組みを支える財政の健全化に向けた、政治の強いリーダーシップが今まさに求められていると言えるでしょう。
コメント