工場の自動化を支えるFA(ファクトリーオートメーション)業界に、今まさに冷たい風が吹き荒れています。FAとは、産業用ロボットや制御機器などを導入して工場を自動化する最先端の技術です。2019年10月から12月期を中心とする四半期決算では、主要なFA関連企業8社が揃って営業利益を減らす、または赤字に陥るという厳しい現実が明らかになりました。かつてないほど激しい米中貿易摩擦の煽りを受け、世界中で製造業の設備投資が手控えられていることが大きな要因でしょう。
特に大きな打撃となっているのが、主要な取引先である自動車業界の急速な落ち込みです。巨大市場である中国では、新車販売台数が2019年まで2年連続で前年を割り込んでおり、各メーカーの増産投資は回復の兆しが見えません。こうした動きに連動し、例えば利益の約5割を自動車向けが占めるファナックでは、同期間の営業利益が45%も減少しました。さらに、工作機械の重要部品である「リニアガイド」を牽引するTHKが2020年2月13日に発表した決算でも、営業利益が前年同期比94%減という衝撃的な数字が飛び出しています。
半導体向けに差し込む光と5Gへの期待
暗いニュースが続く一方で、希望の光も灯り始めました。それは、長らく低迷していた半導体関連の需要が「底入れ」のサインを示し始めたことです。底入れとは、景気や業績が一番底のラインまで下がりきり、そこから上昇へと転じる現象を指します。産業用ロボットの関節部分に使われる精密減速機の大手、ハーモニック・ドライブ・システムズでは、同期間の受注高が7四半期ぶりにプラスへ転じました。また、自動搬送機器を手掛けるダイフクでも、設備投資の回復を背景に2020年1月から3月期の受注見通しを強気に設定しています。
さらに、三菱電機が指摘するように、次世代通信規格である「5G」の普及に伴う新たな需要も具体化しつつあります。SNS上でも「半導体や5Gの復活は心強い」「ここからV字回復を期待したい」といったポジティブな声が数多く見られました。最先端技術への投資が、今後のFA業界を牽引する強力なエンジンになることは間違いありません。自動化の波は止まらないからこそ、このセクターが持つ潜在的な成長力には今なお熱い視線が注がれているのです。
新型肺炎の影とサプライチェーンの危機
しかし、楽観視できない新たなリスクが急浮上してきました。足元で猛威を振るい始めている新型肺炎への警戒感です。中国国内の工場休業が長引けば、世界的な「サプライチェーン(部品の調達から製造、販売に至るまでの一連の供給網)」が完全に分断される恐れがあります。ファナックの山口賢治社長が「影響を注視すべきだ」と警鐘を鳴らすように、業績回復の時期が大幅に遅れるシナリオも現実味を帯びてきました。
今回の決算は、世界経済の連動性と不確実性を改めて突きつける結果になったと感じます。自動車向けの不振を半導体や5Gが補おうとした矢先に、新型肺炎という未知の脅威がサプライチェーンを脅かす構図は、非常に歯がゆいものです。それでも、人手不足や生産性向上のために工場の自動化が必要不可欠であるという本質的なトレンドは変わりません。目先の荒波を各社がどう乗り越え、次なる成長への布石を打つのか、日本のものづくりの底力が今こそ試されているのではないでしょうか。
コメント