大手私鉄決算はインバウンド好調で8社が増益!新型肺炎の影と今後の鉄道ビジネスを徹底解説

大手私鉄14社の2019年4月から2019年12月期までの決算が、2020年2月13日までにすべて出そろいました。東武鉄道や京阪ホールディングスなど、なんと過半数を超える8社が営業増益を達成しています。沿線人口の増加に伴って通勤・通学の定期利用者が増えているほか、お出かけ需要もしっかりと捉えており、各社の底堅い経営体質が証明された形です。ネット上でも「沿線の開発が進んで便利になった成果が出ている」「身近な電車の業績が良いと安心する」といった前向きな声が目立っています。

しかし、この絶好調な波に冷や水を浴びせかねない重大な懸念が急速に浮上してきました。中国を中心に世界的な流行を見せている、新型肺炎(新型コロナウイルス感染症)の影響です。訪日外国人による消費行動を示すインバウンド需要が激減しており、各社が手がけるホテル事業や、成田・羽田などの空港へ乗客を運ぶアクセス線のビジネスに暗い影を落としています。2020年3月期の通期決算における業績予測にも、少なからずダメージを与える可能性が指摘されており、楽観視できない状況が続いていくでしょう。

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空港線の苦戦と安全投資による減価償却費の重荷

今回の決算を細かく分析してみますと、鉄道の旅客収入そのものは、空港線の運賃引き下げに踏み切った京浜急行電鉄を除く13社で順調に推移しています。その京浜急行電鉄が2020年2月13日に発表した2019年4月から2019年12月期までの連結営業利益は、280億円と前年同期に比べて6パーセントの減少となりました。これには運賃改定だけでなく、乗客の転落を防ぐホームドアをはじめとする安全対策費への投資も関係しています。

ここで使われる減価償却費(げんかしょうきゃくひ)とは、建物や高額な設備を購入した際、その費用を何年分かに分割して少しずつ経費として計上していく会計上の仕組みのことです。京浜急行電鉄にとっては、乗客の命を守るための積極的な先行投資による一時的な負担増と言えます。SNS上では「ホームドア設置による減益なら、利用者の安全を最優先にしてくれた証拠だから応援したい」「企業努力の結果としての減益なら、株主としても納得できる」と、同社の姿勢を好意的に評価する意見が溢れていました。

インバウンド激減が直撃するホテル・観光事業への懸念

現在の最大の問題は、足元で多発している中国人団体客による宿泊キャンセルの嵐です。西武ホールディングスでは、通期の業績予想においてホテル事業だけで約10億円の減収を見込むなど、警戒感をあらわにしています。また、阪急阪神ホールディングスは2020年3月16日出発分までの中国方面への旅行ツアーをすべて中止にしました。さらに、近鉄グループホールディングスが運営する人気水族館の海遊館でも来館者が減少傾向にあり、名古屋鉄道でも宿泊施設の苦戦が伝えられています。

このように鉄道会社が多角化して進めてきた観光ビジネス全体に、新型肺炎の脅威が直撃している状況です。私は、これまでインバウンドに依存しすぎていた日本の観光業や私鉄各社にとって、今回の危機は「真の国内ファン」をいかに大切にするかという原点回帰を促す契機になると考えています。外国人観光客が減った今こそ、国内の沿線住民が思わず出かけたくなるような、魅力的な地域密着型のイベントやサービスを打ち出すべきではないでしょうか。

不透明感が増す空港アクセス線の未来と試練

今後の業績を大きく左右しそうなのが、成田や羽田といった主要空港へと繋がるアクセス線の動向でしょう。鉄道収入の3割以上をこの成田空港線に頼っている京成電鉄では、「現段階では影響の全貌を読み切れないが、状況を注視していく」としており、現場には緊張感が走っています。市場のエキスパートからは、2月における各社の空港線の輸送実績が、前年比で20パーセントから30パーセントも落ち込むのではないかという厳しい予測も提示されました。

移動そのものが制限される中で、空港線の需要回復にはまだ時間がかかりそうです。ただ、私鉄各社はこれまでも幾多の災害や不況を乗り越えてきた実績があります。今回の新型肺炎という未曾有の危機に対しても、徹底した衛生管理や、安全・安心な運行体制をアピールすることで、再び利用者の信頼を勝ち取ってくれると信じています。私たちが日々利用する社会インフラの主役だからこそ、官民が一体となってこの苦境を乗り切るための支援体制を整えることが急務です。

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