EU離脱の衝撃!英国の経済損失は過去の拠出金に匹敵?移民制限がもたらす財政への逆風と今後の課題

2020年2月13日、英国のジョンソン首相は内閣改造を断行し、1月末の欧州連合(EU)離脱後に向けた新しい政策運営を本格的に始動させました。高速鉄道や地方インフラの整備を進め、「EUの支配から脱した利点」を大々的にアピールする現政権ですが、足元のデータを冷静に分析すると、離脱派が掲げていた華々しい経済的メリットには早くも暗雲が立ち込めています。本当にEU離脱は英国経済の起爆剤となるのでしょうか。政権には今、国民の不信感を拭い去るという極めて重い課題が突きつけられています。

「EUを飛び出したせいで負担するコストが、これまで欧州統合のために支払ってきた総額を超えてしまうかもしれない」。離脱直前の2020年1月中旬、英国のインターネット上ではこのような衝撃的な噂が駆け巡り、SNSでも「話が違うのではないか」「だまされた気分だ」といった動揺の声が広がりました。かつて離脱支持派は、EUへの拠出金を取り戻して国家医療サービス(NHS)の拡充や経済活性化に充てられると息巻いていましたが、この噂が真実であれば、取り戻すどころか大損をすることになってしまいます。

この騒動の引き金となったのは、米経済通信社ブルームバーグのエコノミクス部門が2020年1月中旬に発表した精緻な試算データです。彼らは、離脱を巡る大混乱が起きなかった場合に達成できたはずの「自然体の国内総生産(GDP)」と、不透明感に揺れた「実際のGDP」の差を「離脱コスト」として算出しました。GDPとは、国内で一定期間に生み出されたモノやサービスの付加価値の合計であり、国の経済的な活力を示す最も重要な指標のことです。他国との連関から導き出されたその損失額は、あまりにも巨額でした。

調査結果によれば、国民投票が行われた2016年4〜6月期から2019年末までに、なんと1320億ポンド(約18.9兆円)もの富が失われたとされています。さらに、このままいけば2020年末には損失が2030億ポンドにまで膨れ上がる見通しです。何より手痛いのは、これまで経済を牽引してきた企業投資が、先行きへの不安から実質1.3%増という超低空飛行に終わっている点でしょう。将来への投資がストップしたことで、英国経済の足腰は確実に弱まっています。

この客観的なデータに素早く反応したのが、離脱に反対していた陣営です。「EU残留こそがコストだった」という離脱派の前提を覆す格好の武器として、SNSを中心に猛烈な批判を展開し始めました。反対派が英国議会の公式資料を基に算出したところ、英国が約半世紀にわたり欧州の統合のために支払ってきた「純拠出金(国庫から支払ったお金から、補助金として戻ってきた分を差し引いた実質的な負担額)」の累計は、2018年末時点で2110億ポンドだったことが判明したのです。

つまり、2020年末に予測される離脱コストの2030億ポンドは、過去半世紀の負担総額とほぼ同等ということになります。わずか数年の混乱で、50年分の支払いに匹敵する大金をドブに捨てたも同然というこの皮肉な現実には、私も暗澹たる気持ちを禁じ得ません。感情論に流され、目の前の「拠出金」というコストだけに目を奪われた結果、より巨大な経済的果実を失うという、まさに典型的な「安物買いの銭失い」の構図が浮かび上がっていると言えるでしょう。

ジョンソン政権がこの手痛い批判を跳ね除け、国民に「離脱して良かった」と実感させるためには、もはや一刻の猶予もありません。2020年3月から本格化するEUとの通商交渉をなんとしても穏便に着地させ、日本をはじめとするEU域外の国々との間で、関税などを優遇し合う通商協定をスピーディーに結ぶ必要があります。遅れてしまった経済成長のスピードを、地球規模の貿易ネットワークでいかにリカバーできるかが、今後の英国の運命を左右する生命線となります。

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誤解された移民問題とこれからの財政リスク

経済と並んで離脱派の大きな原動力となったのが、流入する移民の制限でした。2004年に東欧諸国がEUへ一斉に加盟したことを機に、英国へやってくる移民はピーク時で年間約19万人にまで急増した経緯があります。これに伴い、医療や教育といった公共サービスが圧迫されているとの不満が国民の間で爆発し、「移民が英国の財政を苦しめている」という言説が離脱票を大きく押し上げました。しかし、こうした主張もデータの前には説得力を失います。

英調査会社のオックスフォード・エコノミクスが2018年に実施した調査では、衝撃的な事実が証明されました。移民が納めた税金や社会保険料から、彼らが受け取った公共サービスのコストを差し引いた「財政への貢献度」を調べたところ、EUからの移民は英国の財政にとってむしろ明確な「プラス」をもたらしていたのです。特にやり玉に挙げられていた2004年以降の加盟国からの移民であっても、1人あたり年間約1040ポンドも多く税金を納めていました。

英国政府は2021年にも、専門的なスキルを持つ高度人材の受け入れを優先する、新しい移民制度へと舵を切る予定です。しかし、労働力を感情的に制限しすぎれば、かえって国内の労働力不足を招き、経済や財政の首を絞めるブーメランとなりかねません。主権を取り戻したと喜ぶ英国ですが、目先の数字や偏見に惑わされず、今一度冷徹なデータに基づいた現実的な舵取りを行うことこそが、真の国益につながるのではないでしょうか。

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