新潟県新発田市に、一度耳にしたら頭から離れない魅惑のローカルフードが存在することをご存じでしょうか。その名も「オッチャホイ」です。地元では抜群の知名度を誇るものの、一歩市外へ出ると詳細を知る人が少ないという、まさに知る人ぞ知る幻のメニューとなっています。この不思議な料理を提供しているのは、1946年(昭和21年)に創業した老舗「シンガポール食堂」です。約70年もの長きにわたり、地域の人々の胃袋を掴み続けてきた伝統の味が、今もなお多くの食通を惹きつけてやみません。
この名物には、汁なしの「皿オッチャホイ」と、スープ仕立ての「汁オッチャホイ」の2種類が用意されています。定番の皿オッチャホイは、一見すると日本の焼きうどんやタイの定番麺料理「パッタイ」を連想させるビジュアルです。具材にはシャキシャキのもやしやキャベツ、彩りを添える小松菜と卵が使われています。ひとくち食べれば、ガツンと効いたニンニクの香ばしさとピリッとした唐辛子の辛みが口いっぱいに広がり、お箸が止まらなくなること請け合いです。昼間からビールを合わせたくなる背徳の美味しさと言えます。
味の決め手となるのは、きしめんのように平たい特製の平打ち麺です。材料の一部に独特の粘り気を持つもち米の米粉(ライスフラワー)を配合しており、これが独自のモチモチ感を生み出しています。汁気を含みすぎない絶妙な炒め加減によって、エスニックなスパイスと麺の旨味が完璧に調和しているのです。「仕込みに大変な手間がかかるため、どこにも真似できない」と店主の中村ミツ子さんが胸を張る通り、ここでしか出会えない唯一無二のクオリティを誇っています。
一方で、女性を中心に高い支持を集めているのが「汁オッチャホイ」です。こちらは唐辛子を使用していないタンメン風の仕上がりで、優しく上品な味わいが特徴となります。鶏ガラや豚のコクが凝縮された奥深いスープは、最後の一滴まで飲み干したくなるほど後を引く美味しさです。SNSでも「皿のジャンクな辛さも最高だけど、汁のじんわり染み渡る旨味も捨てがたい」といった声が溢れており、その日の気分に合わせて異なる魅力を堪能できる点も、リピーターを飽きさせない理由なのでしょう。
気になる歴史を紐解くと、創業者の故・中村秀雄さんが幼少期にシンガポールで暮らしていた経験が原点にあります。当時、食べ歩きが好きだった両親とともに現地の屋台で囲んだ思い出の味を、戦後の日本で再現したものがこの料理です。ただし、東南アジアに全く同じ料理が存在するわけではなく、名前の由来も未だに謎に包まれています。現地風の言葉の響きから生まれた独自のネーミングなのかもしれませんが、そんなミステリアスな背景も、人々の探究心をくすぐるスパイスとなっています。
メディアの取材や食のイベントにはほとんど露出しないスタンスでありながら、新発田の店舗には全国からファンが詰めかけています。テイクアウトも可能な皿オッチャホイをお土産にする方も多く、店内で汁を堪能した後に自宅用として皿を持ち帰るという、贅沢な「ハシゴ」を楽しむ強者まで現れるほどです。お店は新潟県新発田市中央町3の2の1にあり、価格はどちらも700円となっています。どこか懐かしくも新しい、新発田が世界に誇る奇跡の屋台の味を、ぜひ現地で体感してみてください。
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