2020年アメリカ大統領選挙に向けた民主党の候補者指名争いは、一瞬たりとも目が離せない怒濤の展開を迎えています。第2戦の舞台となった東部ニューハンプシャー州の予備選が2020年2月11日に投開票され、左派の代表格であるバーニー・サンダース上院議員が激戦を制しました。若年層からの圧倒的な熱狂を武器にトップを走るサンダース氏ですが、その背後からは新星ブティジェッジ氏やダークホースのクロブシャー氏ら中道・穏健派の対抗軸が猛烈な勢いで追い上げており、まさに混沌の様相を呈しています。
今回のサンダース氏の勝利を強力に後押ししたのは、既存の政治への不満を募らせる若者たちの存在でした。メディアの出口調査によると、18歳から29歳の有権者のうち半数を超える51%が同氏を支持したという驚きのデータも出ています。SNS上でも「これこそ私たちが待ち望んだ変革だ」「学生ローンに怯えない未来が欲しい」といった若い世代の声が爆発的に拡散されており、その熱量の高さは群を抜いていると言えるでしょう。
彼をカリスマへと押し上げた公約は、全米で約165兆円にも膨れ上がった学生ローンを政府が全額免除するという大胆不敵な一手です。さらに国民皆保険制度の導入も掲げ、その巨額の財源は富裕層や大企業への大増税によって賄うと主張しています。自身を「民主社会主義者」と呼ぶ彼のビジョンは、格差社会や将来への不安に苦しむ低中所得層にとって、暗闇を照らす一筋の光のように魅力的に映っているのです。
しかし、この劇薬とも言える急進的な政策には、党内主流派からの警戒や反発が根強く燻っています。事実、圧勝した2016年の同州予備選では約6割もの得票率を誇っていたサンダース氏ですが、今回の得票率は3割に届かない水準に留まりました。この結果は、急激な変革よりも現実的な路線を求める声が、党内で着実に広がっている証拠ではないでしょうか。
その現実路線の旗手として脚光を浴びているのが、初戦のアイオワ州で首位に立ち、今回も僅差の2位に食い込んだ前市長のピート・ブティジェッジ氏です。さらに、直前のテレビ討論会で素晴らしい安定感を披露して3位へと大躍進したエイミー・クロブシャー上院議員の存在感も無視できません。白人労働者層に強い彼女は、リベラル派や穏健派の票を巧みに取り込み、これまでの勢力図を大きく塗り替えようとしています。
一方で、これまで本命視されていたジョー・バイデン前副大統領は5位という衝撃的な大敗を喫しました。ウクライナに絡む疑惑の余波もあり、黒人層からの支持率が52%から27%へと急落するなど窮地に立たされています。次戦以降に控える南部サウスカロライナ州などは黒人有権者の割合が高いため、バイデン陣営にとっては文字通り「最後の生命線」をかけた背水の陣となるはずです。
さらに、潤沢な私財を投じて3月の「スーパーチューズデー」から本格参戦を狙うマイケル・ブルームバーグ氏の影も不気味に迫っています。富裕層への増税を掲げる左派と、現実的な改革を模索する中道派の二極化が進む民主党。このまま過激な政策論争が続けば、本選でトランプ大統領に対抗する際の党内結束にヒビが入りかねません。誰もが納得する「勝てる候補」を導き出せるのか、民主党の真価が試されています。
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