トランプ旋風の裏に「1%の富裕層」あり?米国で加熱する資産課税論争と資本主義の未来

アメリカにおける経済格差の拡大が、社会を大きく揺るがしています。カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ教授は、上位1%の超富裕層が国全体の所得の20%を独占している現状を指摘しました。この数字は、40年前と比較して2倍に跳ね上がっています。インターネット上でも「もはや普通の資本主義ではない」「真面目に働く中間層が馬鹿を見ている」といった、現行の経済システムへの不満や切実な声が数多く飛び交うようになりました。

格差が急速に広がった背景には、1980年代のレーガン政権による大胆な減税政策があります。当時の最高税率は70%から28%へと引き下げられ、これが富裕層の利益追求をさらに加速させる引き金となりました。企業は利益を最大化させるために従業員の給与を抑制し、結果として持てる者だけがさらに富む構造が作られたのです。さらにトランプ政権の大型減税によって法人税率も35%から21%に引き下げられ、富裕層の負担は減る一方となっています。

サエズ教授の分析によれば、米国の富裕層トップ400人の実効税率は23%に留まり、国民平均の28%を下回っています。実効税率とは、実際の所得に対して最終的に負担した税金の割合のことです。富裕層が所有する巨大企業が利益を上げても、配当を出さなければ個人の所得としてカウントされません。制度の抜け穴を利用して、一般市民よりも税負担が軽くなっている歪んだ実態に対し、SNSでは「不公平すぎる」との怒りの声が広がっています。

スポンサーリンク

沈む下位50%の不満とポピュリズムの台頭

資本主義は歴史的に最も効率的なシステムとされてきましたが、1980年以降のアメリカでは下位50%の層の実質収入が完全に停滞しています。人口の半分を占める大規模な層が経済的恩恵から見捨てられた結果、既存の政治への不信感が募りました。これこそが、大衆の感情に訴えかけるポピュリズム、すなわち「トランプ旋風」を生み出した原動力に他なりません。経済の停滞は政治の混乱へと直結し、社会の安定を根本から脅かしているのです。

格差は単に貧困の問題に留まらず、国家の成長の源泉をも破壊します。教育コストの高騰により、優秀な若者が才能を伸ばせないという機会の損失が生じているためです。また、圧倒的な財力を手にした富裕層が政治への影響力を強めれば、自社に有利な規制を作って競合を排除するロビイング活動(政界への働きかけ)が横行します。これでは、資本主義の命とも言える自由な競争やダイナミックなイノベーションは生まれなくなってしまうでしょう。

この深刻な事態を打破するため、サエズ教授は「富裕層への資産課税」という画期的な手法を提案しています。これは、従来の所得だけに課税する方法とは異なり、不動産や銀行口座、株式、債券などのあらゆる財産から負債を差し引いた「純資産」の総額に対して税金を課す仕組みです。国際的な減税競争が激化する中で法人税の引き上げは難しく、個人の所得税も回避されやすいため、資産そのものに網をかける方法が最も効果的だとされています。

欧州の失敗を克服するアメリカ独自の課税包囲網

民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、5000万ドル以上の資産を持つ層に2%から6%の税を課し、それを「国民皆保険」の財源にする政策を掲げて注目を集めています。しかし、かつてフランスなどが富裕税を導入した際には、資産家がイギリスやスイスへ相次いで移住し、制度の廃止や縮小に追い込まれた過去があります。そのため、今回の提案に対しても「経済効率が落ちて国力が低下するだけではないか」という懸念の波がSNSを中心に広がりました。

しかし、サエズ教授はアメリカ独自の強みがあるため十分に機能すると反論します。米国には市民権に基づいた独自の課税制度があり、たとえシンガポールなどの海外へ移住しても富裕税から逃れることはできません。さらに、2010年に成立した外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)のおかげで、海外の金融機関から米当局へ口座情報が提供される仕組みが整っています。欧州のような資産隠しの抜け穴は、すでに塞がれているのです。

これまでは、税率を下げれば経済が活性化して全員が豊かになるという「ラッファー曲線」の理論が信じられてきました。しかし現実は、富裕層減税によって一部の貪欲な高所得者だけが潤い、富の再分配は機能していません。すべての人が経済成長の果実を実感できなければ、人間社会の健全な連帯は保てないはずです。行き過ぎた資本主義の暴走を止め、誰もが挑戦できる社会を取り戻すためにも、この資産課税の議論を真剣に進めるべきでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました