アメリカという超大国が今、歴史的な分岐点に立たされています。2019年11月13日現在、世界を揺るがしているのはエマニュエル・シーズ教授らが指摘した「税制のゆがみ」という衝撃の事実です。なんと1960年には56%もあった富裕層の実効税率が、2018年には23%まで急落しました。これに対し、低中所得層の税率は24%へと微増しており、ついに税負担の重さが逆転してしまったのです。SNS上でも「一生懸命働く一般市民が、大富豪より高い割合で納税しているのはおかしい」と怒りの声が噴出しています。
実効税率とは、各種の控除などを差し引いた後、実際に所得から支払った税金の割合を指す専門用語です。トランプ政権は2017年12月に成立させた大型減税の恩恵を強調していますが、民主党側はこれが格差を広げる「金持ち優遇策」に過ぎないと猛反発しています。2020年11月の大統領選挙を控え、この不公平感は単なる経済論争を超え、国民の感情を激しく揺さぶる大きな政治的火種となっていることがひしひしと伝わってきます。
命の長さまで左右する、あまりに過酷な経済格差の現実
米国の格差はもはや、銀行口座の数字だけにとどまりません。上位1%の富裕層が国全体の資産の40%を独占する一方で、下位60%の人々はわずか2%を分け合っているという、目を疑うような格差が定着しています。さらに深刻なのは、所得の差が「寿命の差」に直結している事実でしょう。米政府監査院の調査によれば、高所得層と低所得層の間では、生存率に20ポイント以上の開きがあるといいます。お金があるかどうかが、生きられるかどうかの分かれ道になるという、極めて残酷な社会構造が露呈しています。
このような行き過ぎた格差は、民主主義の根幹を腐らせる「猛毒」のように私には感じられます。多くの国民が努力しても報われないと感じる時、社会は硬直化し、他者への不寛容が広がります。ハーバード大学のベンジャミン・フリードマン教授が警告するように、経済成長の実感が伴わない国では、人々の道徳心や民主主義的な精神までもが損なわれてしまうのです。現在の米国は、まさにこの底なしの「わな」に足を取られている真っ只中にあると言えるでしょう。
右と左の「異端」が台頭する背景と、これからの米国が歩む道
この不満の受け皿となっているのが、左右両極のポピュリズムです。ポピュリズムとは、一般大衆の不安や憤りを煽り、特定の敵を作ることで支持を得る政治手法を指します。トランプ大統領は不公正な貿易や移民をやり玉に挙げ、保守層の支持を固めています。対して民主党の左派候補たちは、富裕層への超高率課税による大学無償化などを掲げ、若者や非白人層を熱狂させています。興味深いことに、製造業中心の地域では「排外主義」へ、IT・金融が集まる地域では「分配の不公平」への反発が強まる傾向にあります。
私は、こうした特定の対象をスケープゴート(身代わりのいけにえ)にする手法には慎重であるべきだと考えます。富豪や移民を敵として叩くだけでは、根本的な解決には至りません。世界中で「強い指導者」を求める声が高まっていますが、今求められているのは、過激な扇動ではなく、誰もが納得できる持続可能な成長戦略と、血の通った所得再分配の再構築です。2019年、米国がこの歪んだ鏡をどう見つめ直し、再生の一歩を踏み出すのか、その行方から目が離せません。
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