2019年11月13日、原子力発電を巡る情勢が大きな転換点を迎えています。関西電力の役員らが多額の金品を受領していた問題は、単なる一企業の不祥事を超え、日本のエネルギー政策全体に暗い影を落としました。SNS上では「民間企業にばかり負担を強いる構造に限界があるのではないか」といった厳しい声や、不透明な資金還流に対する強い不信感が渦巻いています。
エネルギー産業論の第一人者である東京理科大学の橘川武郎教授は、この状況を「国策民営」の歪みが露呈したものだと指摘します。国策民営とは、国が重要政策を掲げつつ、実際の運営やトラブル対応は民間企業が担う仕組みを指します。不都合が生じると政府と企業が責任を押し付け合う現状は、健全な政策遂行を阻害していると言わざるを得ません。
「丸投げ」が生んだ地元調整の深い闇
福井県高浜町の元助役が関与した今回の問題は、地元自治体との合意形成という難題を企業に丸投げしてきた政府の姿勢を浮き彫りにしました。2019年10月の発覚以降、監督官庁である経済産業省の管理責任を問う声も高まっています。橘川教授は、特定の地域特有の特殊な案件であるとしつつも、政府が自ら泥をかぶって調整役に回っていない現状を危惧しています。
2011年3月11日の東日本大震災から8年が経過しましたが、次世代の原発へと更新する「リプレース」の議論は一向に進んでいません。このままでは2060年までに稼働可能な原発は5基にまで激減し、政府が掲げる脱炭素社会の実現は夢物語に終わるでしょう。本来、関西電力はその「ゲームチェンジャー」として期待されていましたが、今回の自滅とも言える不祥事がその足を引っ張っています。
私は、原発の是非以前に、この「隠れて進める」体質こそが国民の信頼を損なう根源だと考えます。エネルギー資源の乏しい日本において、ホルムズ海峡の地政学的リスクや地球温暖化対策を考慮すれば、原発は避けて通れない議論です。それならば、密室での地元調整ではなく、堂々と国民の前でその必要性やリスクを議論すべきではないでしょうか。
未来を見据えた「オープンな国民的議論」の必要性
政府は2030年度の電源構成における原発比率を20%から22%にする目標を堅持しています。しかし、17年度時点での実績はわずか3%に留まっています。この乖離を埋めるためには、政府が前面に立ち、新潟県や茨城県などの難航する立地地域での合意形成を主導することが不可欠です。民間主導のリプレースを国が強力に後押しする形こそが、今の閉塞感を打破する唯一の鍵となります。
SNSでは「即時ゼロ」を求める声が目立つ一方で、現実的な代替エネルギー案に不安を抱く層も少なくありません。橘川教授が説くように、原発政策を国民的な議論へと発展させることが、今の日本に最も求められていることです。過去のしがらみを清算し、透明性の高いエネルギー政策を構築できるかどうかに、私たちの未来の暮らしがかかっています。
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